しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Straight, no chaser.

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Leica IIIf + Summitar 5cm + Kodak Proimage 100

「われわれがサンタクロースを信じさせて子供を育てるのも、ただ子供を騙すためだけではない。子供たちの熱心さがわれわれをまた熱くし、われわれ自身を騙すのを助け、子供たちが信じているように、返礼を求めない気前よさというものが現実と全く両立しないものではない、ということを信じるように仕向けるのである。」

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Leica IIIf + Elmar 5cm F3.5 + Kodak Proimage 100

「ボロロ族は、彼らの組織を真しやかな擬人法のうちに拡げて見せてはしたが、他の種族以上には、あの真理を打ち消すことに成功しなかったようだ。その真理とはー或る社会が生者と死者のあいだの関係について自らのために作る表象は、結局のところ、生者のあいだで優勢な規定の諸関係を宗教的思考の面で隠蔽し、美化し、正当化する努力に他ならないということである。」

(レヴィ-ストロース「悲しき熱帯」第6部「ボロロ族」より 下線は引用に際して付した。)

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左がSummitar5cmで、右がElmar 5cm (F3.5 Red Dial) - どちらもF 5.6~F4.0程度で撮影したはずです。こうしてみると、ズミターの方がピントを合わせたところはシャープに写っているように見えます。周辺部はちょっとグルグルしているようですね。エルマーの方は全体に安定しているように感じます。

IIIfを入手した時、レンズの前の小さな絞りレバーで絞りを調整しないとならないエルマーを敬遠してズミターを選んだのですが、レンズが重いので、鏡胴を伸ばした状態でテーブルにカメラを置くと、カメラがお辞儀をしてしまう(レンズ側に倒れてしまう)のが気になって・・・どうでもいいことだとは思いますが・・・ついに、エルマーと交換してもらいました。

ズミターは買った時よりもちょっとだけ高く売れたのでそれはそれで嬉しかったのですが、Lマウントのエルマーって、こんなに高かったっけ。。。数年前の倍、とは言わないまでも、1.5倍くらいのような感覚です。もうワンランク上のA品も見せてもらったのですが、税込15まんえん!綺麗だったのでぐらっときましたが、すぐに正気に戻って、こちらのAB品にしました。

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ほうら、ちゃんとカメラが正立しています!

いや、それがどうしたっちゃあ、それまでなんですが、お酒のグラスを片手に、机の上に置いたカメラを眺めるときの気分が違う!のです。

が、今頃になって気がついたのですが、このSBOOIのファインダー、数年前に入手したものなのなのだけど、これ、かなり曲がってしまっていますね。。。(泣)。

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上の写真は、最後にズミターで撮った写真ですが。。渋い色合いとフワアッとしたソフトな描写が、実にいいですねー。。

売ってからわかる、ライカレンズは売ってはいけない、ということが・・・。

「戦前日本のポピュリズム 日米開戦への道」から「坊っちゃん」まで

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「♪戦争がおわって〜僕ら〜は生まれた〜」っていう歌が昔ありましたが(あったのだ)、小学校6年生の時の僕の先生が副業が神主さんで、授業が脱線すると、よく戦争の話を聞かされました。なんでアメリカみたいに大きくて強い国と戦争しちゃったんだろうな〜と子供心に不思議に思い、その不思議を抱えたまま、大人になって幾星霜、50代も半ばを迎えてようやく朧げながらその理由が分かりかけてきたような気がする今日この頃です。

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「ここで五・一五事件裁判のポイントをまとめておこう。第一に、普通選挙決定(一九二五年)、実施(一九二八年)によりポピュリズム化が開始されたのだが、このころになると、政党の勝利で官僚に対する「政治優位」が確立したことが「政党専横」と見られ、批判の対象となっていたことがわかる。そして、それが官僚的なもの(軍人)の復権志向となり、それとマスメディアとの結合傾向が見られはじめたのである。」

筒井清忠. 戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2214-2218). Kindle . 

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「軍艦はただの船ではありません。同じ船でもタンカーや貨物船などとはまるで違います。軍艦は戦争に使うためにつくられた船です。戦争というのはいくらりっぱな口実をつけても、けっきょく人間と人間のむだな殺しあいですが、軍艦はその人殺しの兵器を積んだ船です。そして戦争になればその兵器で相手の人間を殺すのです。それが軍艦の目的です。このことは旧海軍の軍艦だけではありません。いま自衛艦とかいうまぎらわしい名まえで呼ばれている『軍艦』についても、まったくおなじことがいえます。軍艦をみて勇ましい、プラモデルはカッコいいと思うまえに、まずそのことをよく考えてください。」(渡辺清戦艦武蔵のさいご」童心社「あとがき」より)

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1970年代の学校教育では歴史の授業は明治維新で終わりになっていたので、明治の時代から今日までずっと今のような世の中だったのだろうな、という印象を持ち続けていたのですけど、ようやくそうではなさそうだと気がつくのにこれだけ時間がかかってしまうとは自らの不勉強に赤面の日々であります。最近の中学校(というか、中学生向けの受験予備校)では、ちゃんと普通選挙制度の導入と治安維持法の制定がおなじ年に行われたことが「あめとむち」という整理ではありながらも教えられているようです。

ところで今読み進めているこの本を読んでいて、夏目漱石の「坊っちゃん」の中でポピュリズム化に対する痛烈な批判というか、皮肉が描写されていることを初めて知りました。いやなるほどそういうことだったか。本って読んでいくと本当に面白いですねえ。

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「これでも元は旗本だ。旗本の元は清和源氏で、多田の満仲の後裔だ。こんな土百姓とは生まれからして違うんだ。ただ智慧のない所が惜しいだけだ。どうしていいのか分らないのが困るだけだ。困ったって負けるものか。正直だから、どうしていいか分らないんだ。世の中に正直が勝たないで、他に勝つものがあるか、考えて見ろ。今夜中に勝てなければ、あした勝つ。あした勝てなければ、あさって勝つ。あさって勝てなければ、下宿から弁当を取り寄せて勝つまでここにいる。」(夏目漱石坊っちゃん岩波文庫 44頁)

しかし、漱石って、いやよくこう小気味よくペラペラと書いたもんだな、って本当に感心しちゃいます。

記憶の引き出し

2年ほど「ばっくれて」いた健康診断の帰りに富士フィルムショールームに立ち寄ったら、北井一夫先生の「村へ」の写真展(といっても点数少なめでしたが)をやっていた。思わず「写真家の記憶の引き出し」という本を買って帰ってきてしまった。

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Ricoh GR1v + GR Lens 28mmF2.8 + Kodak ProImage100

「観光地や有名な人や風景を撮らない。美しいと感じる花は撮らない。多くの人たちから価値があると認められているものを撮らない。価値がないとされている、時代とともに忘れられ消えていく、普通の人たちの普通の生活とその場の風景だけを写真にするようにいつも心掛けていた」(北井一夫「写真家の記憶の引き出し」92頁)

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Ricoh GR1v + GR Lens 28mmF2.8 + Kodak ProImage100

なかなか北井先生のように達観することはできないので、きれいに咲いている桜とか、野良猫にレンズを向けてしまうわたしであった。。自転車のカゴの中に、もう1匹いるのだ。

木村伊兵衛から言われたこんな言葉も紹介されていた。

「写真を撮るときは、一番弱い人の立場に立て。」

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Ricoh GR1v + GR Lens 28mmF2.8 + Kodak ProImage100

東京周遊も2年前の6月に、西大井から始めて、概ね1週半で現在足立区を西から東に横断中。ルールとしては、バス、電車、タクシーは使わず、徒歩。日が暮れる前に家にたどり着く程度で止める。そして、前の回で辿り着いたところから、歩き始める。そう決めておくと、週末にどこに写真を撮りにいくか、あれこれ考えなくてよいのがよい。「桜がきれいに咲いていそうだから、千鳥ヶ淵のあたりに行こう」と考えてしまうと、もうそこで、どんな写真を撮るか、決まってしまうような気がする。

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Ricoh GR1v + GR Lens 28mmF2.8 + Kodak ProImage100

ふと通りかかった、名前も知らない稲荷神社の桜が、風に散っていく。境内には他に誰もいない。誰もこの瞬間を見ていない。

それにしてもGRって小さいのによく写るのね。

Second Life of My GR

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Ricoh GR1v + Kodak Ultramax400

高級コンパクトカメラの決定版、憧れのGR1vである。確か2014年の秋に大枚7万カメラ円をはたいて、秋葉原のにっしんカメラで中古で購入したのでした。弱点のファインダー内の液晶表示は「リコーで修理させたばかり」とのお店のおやじさんの太鼓判付きでした。

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Ricoh GR1v + Kodak Ultramax400 + Ricoh GR Lens 28mmF2.8

それから7年が経過しましたが、その間にライカウイルスに感染してしまったこともあり、GR1vのショット数はそれほど行っていないはず。でも数年前にパリでの撮影に持ち出したのは楽しい思い出でございました。

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Ricoh GR1v + GR Lens 28mmF2.8 + Kodak Ultramax400

お店スキャンで補正してあるから、一概には言えないけど、このなんとなく青みがかったようなクールな色合いと、四隅のちょっとした周辺減光がGRレンズの味、ということでしょうか。露出はプログラムオートで、ピントもマニュアルでは合わせられないので、なんとなく不安になってしまい、スナップにあまり持ち出さなくなってしまっていたのですが、半年くらいかけて撮り溜めたフィルムを現像してみると、ピントも露出も(自分で合わせるよりもよっぽど)正確なのであります。

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中古で購入してから足掛け7年、販売されてからでいうとほぼほぼ20年。久しぶりに防湿庫から取り出して電源を入れてファインダーを覗いてみると、あれ、測距点に現れるはずの表示が出てこない。。

その後、使いながら様子を見ていると、測距点を示す表示が現れたり、消えたりを繰り返してるのですが、わたしのGRもついに寿命がきたということでしょうね。とはいえ、表示が出ないだけで、フォーカス機能はちゃんと動いているようですし、焦点距離を示すお山(無限遠)、二人(3Mくらい?)、一人(1Mくらい?)、お花(マクロ)の表示は出るので、狙ったところにピントを合わせているかは把握できます。

しかし、それほど先が長いこともなさそうなので、せっかくのGR、動かなくなるまでもっとフィルムを通してあげようと、心に決めた春の午後なのでした。

さて、近所の散り残りの桜でも撮ってくるかな。

Chet Baker's Voice

少し前に、声優さんたちがたくさん出演している番組を見たんですが、「癒され」系っていうの?「癒し」系っていうの?聞いている人が気持ちよくなる声の出し方っていうのを開陳されている声優さんがいて、音声分析すると、その人たちの声というのは、末尾に少しだけ吐く息が残る感じ?があり、そこが人の感覚に気持ち良い感じを感じさせるということなのだようです。

「たっちゃん、大丈夫?」ではなくて「ごしゅじんさま(あhhhh・・・)、大丈夫(ウhhh・・・)?」という感じで。

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そこで気がついたのですが、チェット・ベイカーの歌声もそうなんじゃないかと思うのです。語尾が「はフー」「フヒー」ってなってるんですよね。「マイファニーバレンイイhhhi...ンんhhhuuu..・・・」「スhiイーhhhhii・・ファニーhiiバahレンタahイイイーンンnnhhhh...」っていう感じで。(hが息が漏れるような音として脳内音声化してください。)

ただ、なんでもこういうアヘアヘフヒフヒ声にすれば、良いでしょうっていうのはちょっと違うんじゃないか。

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あの大震災から10年が経ちましたが、この災害を乗り越えてきた子供達の非常に重くて、心にひびくヒストリーというものがあるのですが、それをお伝えするテレビ番組のアナウンスがやたらこのアヘアヘフヒフヒふへふへ声になっていたものがあって、うーん、なんだろう。

「〇〇くんはhhha、津波で流されたお父さんのohhことをoh、忘れたことはなかったahh...」

私は違和感を感じました。

事実より正しくて尊いものはないと思うので、それを演出で飾り立てる必要はないのだ。

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あのアヘアヘフヒフヒ声を出しているアナウンサーは、いったい誰に、何を、どのように伝えたいと思っているのか。

事実をありのままに伝えるというのが報道のあるべき姿だと思うのだけど、昨今、報道がエンタメ化しているように思われるのは、年寄りの杞憂かな。まあ、楽しいことも大事だけれど、物事のうちで、エンタメ化できるようなこととそうではないこと、そうしてはならないことの違いぐらいははっきりとしておいた方が、良いのではないか。

 

頼みの綱

フィルム写真遊びの「頼みの綱」である私の愛機Epson GTX830の調子が悪い。昨年秋にiMacを新調して、スキャナドライバーをダウンロードし直したのだが、Epson ScanからEpson Scan2にアップデートされていて、こいつに乗り換えてからどうもうまく動かなくなってしまったのだ。Epson Scanの対応OSがCatalina止まりということに気がつかず、ついBigSurにアップデートしてしまったところ、いよいよやばくなってきた。

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背景のボケている部分が、一部崩れたように画像認識されてしまうのでした。。シクシク

このスキャナーももう5年くらい使っていて、写真屋さんに出して一本500円+税でスキャンしてもらうことを考えると、たぶんもう元はとったかなあという感じなので、上位機種のGTX980に買い替えることも考えたのだけど、GTX830の倍のお値段になるし、そもそもGTX980でさえ2014年のモデルなのよね。。一応EPSONの方に質問して見たけど、ピントもいまいち合わないし、ポジフィルムの色合いもなんだか変なので、製品の寿命かもしれないけど、OSやPCとの相性のせいじゃ無いかという気もしているので、今後のフィルムスキャン対応につきましては、専門家の皆さんの意見も踏まえつつ、慎重に検討してまいりたいと、そんなふうに考えているわけであります。お店の任せフィルムスキャンだと勝手に露出補正されてしまうのが、嫌なんですよね。

いよいよもって、デジタルシフトかなあ。

そうすると、この数年買い集めてしまったフィルムカメラの使い道がなくなってしまうんだけど。

これからお電話していいですかとメールしてみる冬のゆふぐれ

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Leica M4-2 + Summicron 35mm + Fujicolor Superia Premium

「信じて欲しい。私は常軌を逸しているのではない。私は、脱中心的な存在(ex-centric)であるに過ぎないのである。」

昨日初めて「世界カメラ市」なるものに足を踏み入れてみた。意外と綺麗なライカたちが、意外に手頃な価格で並べられていたのであった。。M3, M2, M4あたりでも20万円は超えない程度のお値段で。。見せてもらうと、買っちゃいそうなので、ここはグッと堪えたが。。もうすでに色々持ってるし、新しく買う必要はないのだ。

しかしここまで考えて私は気づいてしまった。世界は全て「記号」でできているのであり、そこには「価値」というものはなく、あるのは「差異」だけなのである。従って、私たちがしているのは「消費」ではなく「交換」なのである。

そう、私は気がついてしまった。人間は「交換」する動物なのだということを!

従いまして、私が持っているカメラたちも、本質的になぜそこにあるかというと、それらは「交換」の結果としてそこにあるのであったのであり、それらは別の何かと「交換」するためにあるのであったのであった・・・これって・・・なんだっけ・・・似たような話があったような気が・・・レヴィ・ストロースか?・・・いや、あれだ・・・!「わらしべ長者」だ!

そうなのだ。我々日本人は、モースが「贈与論」を書くよりも先に、気がついていたのだ、人間は交換する動物だというこの「真理」を!いや、「真理」というものもないのだ。。あるのは「交換」される「物語」だけなのだ。。そしてそれは「価値」があるから「交換」されるのではない、「交換」されるから「価値」があるのだ・・ということは、ライカに価値があるのではない、ライカが交換されるからあんなに高いのである、そして交換されればされるほど、交換したい人が増えれば増えるほど、ますます高くなるのだ!!実際、一時期10万カメラ円も出せばそこそこ調子の良いM3が買えたはずだが、今時まともなものを買おうとすれば、20万カメラ円は出さないとならなくなっているではないか!ということは、みんながライカを交換するのをやめれば・・・きっとまた、安くなる、はず。

その時を待とう。

それはさておき、「エキセントリック」って、日本語では「異常」「変なやつ(もの)」っていう意味だと思いますが、なるほど、「ex-centric」だから、「脱中心的」と解すれば良いのね。中心にあるものや中心にいる人が必ずしも「正常」とは限らないから、そうだとすると、「脱中心的」=「異常」という理解には、本質的な誤謬があるのであった。「エキセントリック」とは「脱中心的」なのであって、「脱中心的」であるからといって、異常であると断定することはできない。「エキセントリック」とは「脱中心的」なのであって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

ということに、ようやく気がついたのであった。

そうそう、カメラは買わなかったけど、ずっと欲しかった28mmのファインダー買っちゃった。プラスチック製だけど、金属製は高いので、手が出ません。昨日はM2に28ミリをつけて散歩したけど、28ミリだとなんでも面白そうに見えるので、やたらシャッターを押せますね。