しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

「オレのNikon」 Fの時代

少し前にキムタクがニコンのイメージキャラで、「俺のニコン・・」って呟いて、カメラにチューってキスするCM動画があった様な気がしますが、さすがの私も、カメラにチューはしないのである。それはさておき、ニコン機は以前F2を持っていたのですが、なるほど史上最強の一眼レフと言われるだけあってがっちりしてましたし、見た目もスマートなカメラでしたが、M3ダブルストロークの資金源となって、New FM2やFマウントレンズ一式とともに旅立って行ったのでした。

そして数ヶ月が経ち、いま「F」となって帰ってきた・・・

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軍幹部に「富士山マーク」の初期型。家に持ち帰ってからシリアル番号を確認したら、なんと私と同い年で、多分星座も同じ?だったのでした。

今まで「F」については欲しいと思ったことがなかったのですが、これはおそらくカメラ雑誌での写真が正面から撮影されたものが多いからではないかと。まっすぐ正面から2次元化すると、確かに、「F」の特徴であるとんがり頭が幽霊が額につけている三角布の様に見えるというか、無機的に見えてしまって「古臭いカメラだな」って思ってたんですね。

でもこうして実機を手にしてみると、亀倉雄策がこのとんがり頭にこだわった理由がよくわかったというか、これ、単純に見えてすごく、なんていうんでしょう、相変わらずのボキャ貧ですが、「味」があるっていうのでしょうか。「F」以外のカメラにはない個性的な形です。てっぺんが尖ってるだけではなくて、稜線の部分がビシッと角が立っていて、なんだか金属でできてるんだけど「宝石」のような、独特の「気品」と時代を感じさせない斬新さを醸し出しています。

ニコンといえば報道関係者の御用達という印象があって、「実用品」というイメージを持っていたのですが、いやこれはもう立派な「贅沢品」ですよ。ていうか、当時の報道陣はこういうlittle jewelのようなカメラで報道取材してたんだなって想像すると、「本当に『豊かな時代』だったんですね」っていう気がします。

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Nikon F + Nikkor H Auto 50mmF2.0 + Kodak Tri-X

もう一つ意外だったのが、カチッとした見た目とうらはらな柔らかな操作感。機関部がレンジファインダーニコンSの血を引いてるからなんでしょうか。ソフトなシャッターレリーズの感覚、そしてシャッター音も、F2は「バシャッ!」っていう、まさにオリンパスの米谷さんが一眼レフの「三悪」と呼んだ「うるさい」っていうのはこのことかなって思わせる威勢の良さだったんですが、「F」は、カタカナではなくてひらかなで「ぱしゃん・・」という感じなんですね。

一言で言うと、ハンサムなカメラというか、F2のイメージからあれよりもさらに「体育会系」的なカメラを想像していたのですが、じつは意外と文学青年だった。

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以前はNew FM2に合わせてAi-Sのレンズを使っていましたが、今回は年代的にNikkor Autoの50ミリF2レンズを合わせました。そしてNikkor H Auto 28mmF3.5も追って入手。でもこれって、数ヶ月前に売ったのと同じレンズなんだよな。。本当にお金のムダ遣いとはこのことですね。自分に「喝〜!」です。

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気になる点としては、巻き上げレバーがグラグラします。「F」はこれが仕様とどこかで読みかじって知ってはいましたが、そうでなければ不具合品と思ったでしょうね。あと、あちこち角が立っているので、指が痛い(特に、巻き上げレバーの角)のと、やはり裏蓋+底の部分をごっそり外すというフィルム交換が大変というか、外した裏蓋の処理に困りますね。。フィルム圧板に傷とか脂とかつけたくないなーとか思いながらカメラを持ち替えたりしてるうちに、シャッター幕に親指突っ込みそうになりました(汗)。

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それから、この個体に関しては、裏蓋が少ーし軋む・・・F2も裏蓋の軋みが気になって手放した理由の一つになったのですが、私はこの裏蓋の周辺の「軋み」とか「ガタ」が病的に気になるのです。最近のデジタル一眼カメラも、メディアスロットカバーのところのガタというかあそびが気になって仕方がない。私だけでしょうか。前に持ってたオリンパスE30とか、フジのX-Pro2とか、相当「あそび」があるみたいで、街撮りで、右手でカメラを掴んで歩いてる時にカバーがカタカタすると、萎えるんですよね、何かが。

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とはいえ、この個体が製造されてから50年以上経過しているわけで、この間に世の中で起きたこと、自分に起きたことを思い出してもごらんなさい、すごい時間ですよ、50年って。人間なんか50年のあいだにどれくらい疲弊、消耗、劣化、沈殿、汚損、停滞するか、アンタ鏡をよく見てごらんなさいってなもんですから、私はこのMy Birthyear Nikonの裏ぶたのかすかな軋みに関して何もいえません。

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「人生五十年。下天の内をくらぶれば夢幻の如く也」とはいうものの、よくここまで持ち堪えてきたね、とまるで自分に語りかけるような、そんなNikon Fの使い心地、こいつは売ったりせずに、使い続けようと密かに心に誓う、晩秋の日曜日の午後なのでした。