しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

ライカM11と、イワンが見た「悪魔」

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Leica M + Summilux 50mm ASPH

「だから、もっぱら仕事上の義務とぼくの社会的な立場から、やむをえず、自分のなかのよい部分を押しつぶし、不潔な仕事をつづけるはめになったんです。僕の名誉はだれかがそっくりかっさらい、ぼくには不潔な分け前だけが残されているってわけなんですよ」(光文社「カラマーゾフの兄弟 4」第11篇「兄イワン」より)

カラーネガフィルムでゆるく撮る、というのが本ブログのテーマだったのですが、私のこれまでの人生の傾向をなぞるかのように、なし崩しになってきております。それに、写真のことよりも自分が読んでいる本の話のほうが多くなってきてしまいました。それはそれとして、上に引用したのは、カラマーゾフの3兄弟の次男、イワンの「幻覚」に現れた「悪魔」の発言なのですが、これって、なんだか、この小説が描かれてから100年後の世界にて、80年代の「高度資本主義」を超えた「超、超高度資本主義」に生きる私たちの、ひとりごと、なのか?!と、ハッとさせられて、引用してしまったと、まあこういう次第なのです。

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Leica M + Summilux 50mm ASPH

昨日、私の愛機ライカMを購入いたしましたライカストアに久しぶりにお邪魔しまして、話題のM11に触らしてもらったのでした。一番気になるシャッター音は・・・無音です・・電子シャッターの設定になっていたようです。メカニカルシャッターでも確認しましたが、「コト」という感じの上品なシャッター音。ライブビューでの撮影も特に違和感ないのかもしれません、でも相変わらずオートフォーカスではないので、もしライブビューでスナップするとしたら、絞り込んで目測でっていうことになるのかな。気になるお値段は120万円・・・これって、むかーしむかし、まだ向こうみずな「ワカモノ」だったころに「清水の高台」から飛び降りて買った、ドカティ750SSとほぼ同じ値段です。あのバイクについては、120万円の価値は直感的に理解できたのですが・・・そこまでの価値が、このいちだいのデジタルカメラに果たしてあるのか、ないのか、よくわかりません。。。結局、目を瞑ってでもとにかくアクセル開ければ時速200キロ出せるバイクと違って、カメラって結局使い手の使い方しだいでその価値が左右される道具ですものね。。ある意味、高価な毛筆とか万年筆とか・・・日本刀みたいなもの?

しかし結論としては、「欲しい!」と思ってしまいました。買うんだったら、Mの重さにやや閉口している私としてはアルミとマグ合金のブラッククロームにすることに決めました(買えないけど)。6000万画素っていうファイルサイズに引いてしまっていたのだけど、これって3600万画素、1800万画素って、三段階に選べるのですね。すごーい。ただ、買わないから余計なお世話だとは思うのですが、バッテリーをロックしているツメがちょっと頼りないというか、ガッチリと押さえてる感じがしなくて、使ってるうちにバカになっちゃうんじゃないかな、て思いました。

まあ、いずれにしても、買いたくても買えない値段に設定してあるので、おかげさまで、過ちを冒すことはなさそうです。多分。でも、発売前の情報でのドル表示の価格では、M10よりも安く設定されていたように思ったんだけど、円安だから仕方ないのかな。90万円を超えないくらいの値段に設定してもらうと、「手持ちの機材全部手放して、逝っちゃう?」っていう気になってたかもしれないけど。。

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Leica M + Summilux 50mm ASPH

いずれにしても、当分は愛機Leica Mとズミルクスの組み合わせで、こと足りているので、M11を購入することはないのだ。そう、たぶん。

「ほんとうの話、どんなふうにしてぼくが、かつては天使なんかでいられたのか、想像もつかないんです。(中略)今は、まともな人間という風評だけを大事にして、人に嫌われないように努めながら、成り行きまかせの暮らしをしているわけです。ぼくは心から人間を愛していますから。」(光文社「カラマーゾフの兄弟 4」第11篇「兄イワン」より)

気のせいかもしれないけど、イワンの幻想の中に現れる悪魔とイワンの会話って、「ダンス・ダンス・ダンス」の主人公と「羊男」との会話に、ちょっと似てるな。