しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Pentax SL & Olympus OM1n:1971年冬のニューヨーク

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Pentax SL + Super Multi Coated TAKUMAR 55mm F1.8 + Tri-X

森山大道の「'71-NY」届きました。うーん、すばらしい・・・フォーカスも、解像度も、実はいらないのだ、ってことがよくわかりました。シャッターを押して、撮り続けることで、なにかが出来上がる。その時、その場所で、それを経験した人にしか、できないこと、できないものが、できあがる。30年の時を経た後にできあがるんだ、と。

そういうことなのかなって思いました。例によって、本が分厚すぎてページを開くのに手が疲れるのと、小さなカメラ(Pen W)で撮ったとは思えないほど迫力のある写真に当てられてしまって、まだ半分も見切れてないのだけど。

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近所の写真屋さんで確か3000円くらい?で譲っていただいたペンタックスSLの中に入ってたTri-Xを全部撮り切ったので、久しぶりに現像してもらいました。このカメラ、SPと違って露出計がついてなくて、シャッタースピードダイヤルと、レンズの絞りリングで、マニュアルで露出を決めてシャッターを切る、というシンプルなカメラなのですけど、こうして白黒フィルムでちゃらっとスキャンしてもらうだけで、なかなか味のある画像が得られるのです。

少々油切れっぽいのが気にはなっているのですが、修理屋さんでみてもらったところ、シャッタースピードは1/1000秒は流石に出てないけど、他はそこそこ許容範囲内、修理する必要はないんじゃない?ってことでした。

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知人の自宅に電話したら、幼児が電話口に出てきて、その子に「おとうさんいますか?」と聞くと、「うん、いるよ」と答えて、しばし沈黙の時が流れる、というものがあります。あの沈黙の時に感じる奇妙な感じというのは、「父親はいるか?」という言葉に付属している「いたら電話を代わって欲しい」という「意味」を認識していない、認識の不在、意味の不在に直面したことから生じるものなのではないか、ということに、今読んでいる本を読んでいて気がつきました。

女の子の自宅に電話したら、お父さんが電話口に出てきて、「A子さんいますか?」と聞くと、「おりますが、どのようなご用ですか」と聞かれて、なんともいえない沈黙のひとときが流れる、ということもあるかもしれませんが、あの沈黙には、また別の哲学的な意味合いがあるのではないかと、考えています。幼児の沈黙からは意味の「欠落」を感じますが、父の沈黙からは意味の「充溢」を感じます。つまり、大人になるということは、意味を感じ、理解し、意味が溢れて、それに溺れてしまうというその経緯に他ならないのかもしれません。

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Olympus OM-1n + Zuiko 100mmF2.0 + Kodak 200

で、何が言いたいかというと、中平卓馬のカラーポジの写真って、誰かが書いていた表現ですが、目の前に大きなクエスチョンマークを突き出されたような、そんな感触を感じます。何が何だかわからない、いったい何を言いたいんだ?という不安に囚われて、一生懸命写真の意味を探し出そうとするのだけど、その答えが、見つからない。

「うん、春だから、たけのこか!さっと煮てもよし、軽く炙ってもよしだ!」

っていうことを言いたいわけでも、なさそうですし。

「お父さんいますか?」と問割れた子供が「うん、いるよ」と答えたあと、次の問いを待ちうけて耳を澄ませているような、そんな写真であるように感じます。

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Olympus OM-1n + Zuiko Auto T 100mmF2.0 + Kodak 200

さて、ようやくカラーネガの写真が上がってきました。「カラーネガでゆるく撮った写真を」というのがこのブログの基本コンセプトだったはず、なのですが、いつの間にやら高画素のデジタルカメラでギラギラに撮った写真が大勢を占めるようになってしまいました。この写真もご覧の通り、昨年の夏に撮ったもの。でも、夏らしい、いい日差しが写ってるように思います。「虎の子」のZuiko 100mmF2.0はスッキリ、清々しい写りです。

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Olympus OM-1n + Zuiko Auto-T 100mmF2.0 + Kodak 200

そういえば、OM Digital Solutionsがついに新型のフラッグシップ機を、出しましたね!しかも「OM-1」という先祖返りの名前で。

おでこのブランド名が「OM DIGITAL SOLUTIONS」になるのかと思っていたら、「OLYMPUS」銘を残してくれたんですね。まあ、スペース的な問題があったのかもしれないけど。。。あっ、「OM SYSTEM」にすれば、おでこのスペースに収まるのかな。「KONICA MINOLTA」は、なんとかペンタプリズムのおでこのスペースに収まってたし。。

さすがに今回はなかなか力が入ってるみたいで、特にEVFが500万画素オーバーになった、というのが興味をそそられます。OM-D EM-5 MarkIIを一時期使っていたのですが、EVFの見え具合が一番の不満で手放したので、「初めてポジフィルムをビューワーで覗いた時の感動を思い出しました!」とか言われると、それだけで購入予約してしまいそうになりますが、街をフラフラ歩きながら写真を撮って、日が暮れる前に家に帰る、という私のスタイルでは、完全にオーバースペックのカメラなので、買うことはないでしょう。おそらく・・・ですけど。