「明くる日の朝は、先ず広沢の池のほとりにいって、水に枝をさしかけた一本の桜の樹のしたに、幸子、悦子、雪子、妙子という順に列んだ姿を、遍照寺山を背景に入れて貞之助がライカに収めた。」
このところ、週末にカメラを持ち出す暇もないくらい忙しかったのですが、そんな中、5月に続き、再び帰省する機会がありました。そうすると、毎度のお悩みが「どのカメラを持っていくのか」ということになりますが、ずっと高稼働状態が続きお疲れ気味の老骨に、おりからの猛暑の中重いカメラを持って歩く気力もなく、ライカでさえ重すぎる、ということで、小さなローライ35を持っていくことにしたわけです。フィルムは近時のフィルム高騰を踏まえお安い(といっても一本1200円!)フジのカラーネガにしようと近所の写真屋に行ったところ、なんとお休み。やむなく電車に乗って最寄りのヨドバシカメラまでショートトリップ。電車に乗っている間に気が変わり、大枚叩いて(溜まってたポイント使いましたが)プロビア5本を仕入れた次第です。
ローライ35といえば、スティーブン・ショアの「American Surface」。アメリカ中を旅しながら、日々の風景、出会った人、食べた物、モーテルの部屋、冷蔵庫の中、使ったトイレまで・・・ローライ35で撮りまくった、ロードムービーのような写真集なのですが、あれって、カラーネガで撮ったのかな。あれとおんなじ感じで!っと意気込んだのではみたものの、出会った猫ぐらいは撮れるかもしれないけど、ガラスの心臓の私には人間のポートレートは撮れそうにありません。ストロボも持ってないので、夜や室内の撮影も無理。トイレを取る気はない。。。それに、日本のホテルのトイレはどこも綺麗なので、ショアの写真集のように味のあるというか、ある意味馨しい(?)写真にはなりそうにありません。食事にしてみても、日本の食事は美味しそうに見えすぎるので、ショアの写真集に出てくる、あの実に不味そうな食べ物の写真は、撮ろうとおもってもなかなか撮れそうにないですよね〜。
ということで、以下、とある地方都市の真夏の風景をランダムにアップロードすることとします。
周囲に雨宿りできそうな建物もないなか、夕立を心配しましたが、わずかにぱらついてはきたものの、外を歩いてる間はなんとか持ちこたえてくれました。
子供の頃、このグラウンドに集まって野球の練習をしたものですが・・・近所でちゃんと9人以上のチームを編成するくらいはいたあの子達はどこにいっちゃったんでしょう。
日差しも出てきた。
今夏の帰省の目的の一つが30年ほど前に他界した祖父の墓参り、だったのですが、肝心のお墓が見つからず。。墓じまいしちゃったのかな。
小さいカメラだから、水平を撮るのが難しい。ちょっと気を抜くと、画面が左に傾いちゃうんですよね。
昔はこの池に鯉?金魚?がたくさんいたと思うのだけど。。今は水も抜かれて、白鳥さんだけが虚空に浮かぶのみなり。
ローライ35は距離計がないので、目測でレンズの距離指標を合わせるのですが、ある程度絞り込めれば、そこそこ被写界深度の中に被写体を収めることは難しくはありません。最近、老眼が進んで目が疲れやすくなってしまったせいか、一眼レフやライカのファインダでピント合わせるのが億劫になることがあるんですよね。考えようによっては目測撮影は目が疲れないので気楽といえば気楽です。
帰省するといつも思うのだけど、空が広い、というか、近いんですよね。
駅前のホテルにチェックインしてシャワーを浴びたあと、飲み屋を探しつつ人気の少ない街中を歩いてて、ふと予感がした路地にはやはり猫たちが屯していたのでした。
だいぶ暗くなってきていて開放のF3.5か、F4まで絞りを開いて、シャッター速度は15分の1秒くらいにしたと思うのだけど、やはりブレちゃいましたね。とうことで、今夜のビールは向こうから歩いてきたお姉さんがアルバイトで入っていった居酒屋に決定。
お見苦しくてもうしわけないが、一応ショア的にホテルの部屋も。
実は初日から張り切って飲み過ぎてしまい、かなりひどい二日酔い、というか、締めにラーメンにチャーハンまで平らげたせいで激しく胃もたれ、いささか体調不良の二日目です。それにしても、地方のバーは安い。ジントニックにハイボール、なんだかんだで7〜8杯は飲んだと思うんだけど、お勘定したら7千円しかしなかった。。
夜の帳が下りると、これがお城か神殿?に見えるのよねー。
この角の店は昔(といっても50年前だが)「サントス」っていうお店だったと思うんだけど、命令されると、よっていきたくはなくなるような気が。。ちなみに、これだけ移り変わりが激しいというか、衰兆のめざましいこの街で、この目玉の形の出窓はおそらく50年以上変わってないのよね。ある意味ここの記念物だ、と私は思っています。
しかし、暑い。日陰もない中歩いていると汗が吹き出るし、二日酔いで脱水症状になりそうです。
海に近いから、川、というよりは、入江みたいなものですね。子供だった頃この川が溢れて床下浸水になったことがあったな。
誰もいない公園に彫刻だけがゴージャスに立ち並んでるのがシュールです。上の作品は特にシュール。夜中に見たら怖そうだ。
真夏。
「商店街」に入ってから出るまで、かろうじてお店開けてたのは古本屋さんだけでした。。かなりしんどそうでしたが。
次に来たときはこの店にするかな。
壊して・・まだ何か作るんかい?
がらんとした商店街にヘンリー・マンシーニの「ムーンリバー」が流れる風情はやはりシュールですが、多少商いの気配もあります。ラーメン屋も空いてたし、街のこちら側の方がまだ元気が残ってるのかな。市役所に近いせいかな。
仏壇って結構高いのね。
爽やかな牧場の風景が。
吸い込まれるように入っていったとある路地。
夜の歓楽街?
まさに「城跡」。手前の「小壺」も一度ハマったら二度と出てこれなくなりそうだ。
タヌキと目が合ってしまいました。。
こちらは完全にシャッター街。枯れ果ててます。往時を知る者にとってはちょっと信じ難いのだけど、東京のような都会に暮らしているとわからない、この国の本当の現状が感じられるような気が致します。
記憶が正しければ、25年ほど前、このお店で朝定食を食べた。美味しかったです。この辺りでは、昔から「いりこ」(煮干し)で出汁を取るのですが、まさにあの味のお味噌汁がでてきて、懐かしかったのを、懐かしく思い出す。
ここからパラシュートをつけたG.I.ジョーを投げた記憶があるんだけど。
急に頻繁に来だしたのでご先祖さまもあの世でびっくりしたと思うけど、とにかくも墓参りを済ませて、この日のビールはこちらのお店に決定。お盆の中日だったけど寿司(並)を注文。小アジのフライは残念ながら売り切れにて、ざんねん。
この小さな街で営業してる居酒屋はここだけのようで、お盆の家族の集まりとか、ちょうど自分と同じくらいの年頃の方達の同窓会?的なグループで、結構賑わっておりました。もしもあのままこの街に住み続けていたら、僕もその仲間になってたのかも、と思ったりしながら店を出るときれいな夕日が。あの頃いつも見てた夕日と変わらないねー。
ホテルのロビーの置物や部屋の額縁をショア的に。
初日と二日目で体力を使い果たし、炎天下に街に出る気にもならず、ホテルの窓から。
最終日は京都です。本願寺にお参りを済ませてから、東山界隈を散策。
龍馬と中岡慎太郎。かっこい〜。
「で、常例としては、土曜日の午後から出かけて、南禅寺の瓢亭で早めに夜食をしたため、これも毎年欠かしたことのない都踊を見物してから帰りに祇園の夜桜を見、その晩は麩屋町の旅館に泊って、明くる日嵯峨から嵐山に行き、中の島の掛茶屋あたりで持って来た弁当の折を開き、午後には市中に戻って来て、平安神宮の神苑の花を見る。」
新幹線の中で谷崎潤一郎の「細雪」を読み進める。20年ほど前に買った文庫本だけど、ようやく面白さが分かってきた。主人公たちに倣って「瓢亭」で昼飯食うか、と思ったけど、ひとり飯もなんとなく気詰まりなので、やめにした。それに、この時間からビール飲んだりしたら、もう歩く気もなくなりそうだし。
紅葉の季節にまたきたいな。
この辺り以降、早い時間に開店したばかりの祇園のバーにて夕涼みを兼ねてサイドカーをいただいた後だったせいか、盛大に左に傾いてます。我ながら少々気持ち悪くなってくる。すみません。
この橋、酔った状態でわたりたくないな。そのまま三途の川を渡ることになりそうだ。
こうしてみると、目測で撮影した割には、結構ちゃんと写真が撮れていることに、素直に感動。あまり使わないこともあって一時期、手放そうかな、と思っていたローライ35ですが、やはりこの機材は「現状維持」が決定です。目測フォーカスにさえ慣れることができれば、実はファインダーで神経質にピントを合わせて撮影するよりも、自由で気楽である。露出に関しては今回ほとんどこのカメラに組み込まれているゴッセンの露出計の「でた目」どおりで撮影したのですが、製造から半世紀近く経っているにもかかわらず、依然として正確な露出値を測ってくれているのには驚きます。ローライ35はゾナーのF2.8のレンズがついた個体も知り合いから譲ってもらったのだけど、こちらもオーバーホールしてもらおうかな。
今回実は、フジフィルムX100vもサブ機として持っていたのですが(そのため結局カメラバッグは結構な重さになってしまった)、デジタルだと撮影してすぐに結果が見れてしまうのだけど、フィルムを使って撮る写真って、露出とか、ピントとかに悩みながら撮影するときと、そうして撮影したフィルムが現像から上がってきたときの、二回、楽しめるような気がするのですよね。
フィルムの値段高騰にデジタル化への移行を結構真剣に考えていたのですが、もうしばらくはフィルムでの撮影を楽しむことになりそうだ、と改めて感じた今回の帰省でした。