しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

ライカ共同幻想論〜日暮里、千駄木、そして千石

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Leica M5 + Elmarit 28mm (2nd.) + Kodak Ektachrome

令和3年7月某日。「日暮里駅」にて下車。カバンからライカM5を取り出した私は駐輪場の脇の休憩スペースにて28ミリのファインダーを取り付ける。このファインダープラスチック製なのだけど、足の部分が右側に少しオフセットされていて、ファインダーの本体部分を掴んでカメラにつけたり外したりしているうちにそのうち足の部分がとれるんではないかと思ってしまうが、そのあたり耐久性はどうなんでしょう。

「青い田の露をさかなやひとり酒」

小林一茶がこの句を詠んだという「本行寺」の前を通過。この辺りが武蔵野台地の東の端だった名残がある。「夕焼けだんだん」には向かわず、右に折れて諏訪台通りに入り、「諏方神社」にてぎょろりと目玉の大きな黒いこま犬を見つけて、激写。神社にお参りした後、富士見坂を降る。2000年ごろまでは、ここから富士山が見えていたが、本郷通り周辺のマンション建設でビルとビルの間にわずかに見えるか見えないかになっちゃった。これを土地の人は「すきま富士」とよんで愛でている、という解説が坂沿いに写真と共に掲示してある。f:id:Untitledtrueman:20210725114221j:plain

坂を降りきったところで商店街を抜けて、さらに住宅地に入っていく。不忍通りを渡って、また坂を上がる。ちょうど午後1時。暑い。何年か前、銀座のバーで「開店記念です」ということでもらったタオルで汗を拭く。千駄木の住宅地を抜けて、ひとまずの目的地である吉祥寺を目指すのだが、適当に路地を曲がっていくと行き止まり。引き返して、ここなら抜けられそうかな、と曲がっていくとまた行き止まり。

昔むかし、このあたり一帯は、上野寛永寺造営時に木材を切り出したという雑木林が広がっていたようであるが、その面影があるような、ないような、住宅地、学校、墓地、公園の中を歩いているうちに、「養源寺」門前に辿り着いた。このお寺、少し前にきたことがある。夏目漱石の「坊っちゃん」に出てくる主人公の家の奉公人「清(きよ)」のモデルになった漱石の友人の祖母の墓があるということで知られているんですが、前回きた時には墓地の中を探せど探せど「清(きよ)」の墓は見つからず、断念してしまったのだ。

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見つからないものを探すのは面倒だ、と思ったが、足の向くままに墓地に入る。なぜだか今回はあっさりと「清(きよ)」の墓が見つかる。「米山」姓なのだが、昔の書き方で左右逆に「山米」と書いてあるので、見つかりにくかったのだ。

一旦本郷通りに出て、脇道にそれると何やら年季の入った大きな塔のような建物(江戸時代に建てられた「経蔵」という建物です)のある脇っちょから「吉祥寺」の境内に入る。

雑誌「coyote」第6(2006年1月)号掲載の記事によれば、この辺りに吉本隆明の家があったはずだが、その中でホンマタカシ氏が撮影した大仏の写真をみつけ、「こんなところに大仏があったのか」と思って自分の目で見たくなった、というのが本日のとりあえずの目的。

 本堂にお参りし、山門に向かって歩いていくと、右手に大仏、というか、大きめの釈迦如来像である。ホンマタカシ氏の写真は冬で周りの樹木の葉が落ちていてすっきりと見えていたのだが、あれから15年が経過して大きくなった周りの木が盛夏でびっしりと葉を繁らせているので、だいぶ雰囲気が違う。ホンマタカシ氏と同じく横顔を撮りたかったのだけど、木が邪魔で真横からは撮影できないので、やむを得ず、右斜めから激写。ひとまず本日の目的は達したと、ふと振り返ると、三毛猫が地べたに張り付いていた。死んでるのかと思ったが、暑さでまいっているだけのようだ。本日は一本1700円のKodakの高級ポジフィルムを装填しているのですが、惜しげもなく10カットほど激写。

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上掲「coyote」のインタビューの中で「願いごとを一つあげるとすれば、何ですか」と訊かれて、足が不自由になっていた吉本氏が「毎日130メートルほど歩くようにしているが、なんとか400メートル歩けるようになって、富士神社にいって縁日の焼きそばを食べたい」と答えている。確かに縁日の焼きそばは、時々無性に食べたくなることがあります。そこで私も「富士神社」に向かう。富士神社は前回、巣鴨から歩いてきたときに偶然見つけていて知っていたのだ。途中、また猫を見つけた。今度は白と黒のブチの猫だ。そこへ本郷通りのほうからお母さんと一緒に5歳くらいの男の子が現れて、真っ直ぐ僕の方にやってきて「どこにいくの?」と問うので、僕は「決めてない」と答えた。

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富士神社から本郷通りに抜けるとすぐに「六義園」である。中には入らず、煉瓦塀に沿って早足に中山道に抜け、さらに千石の住宅地に入っていく。ほとんど店が残っていない商店街の名残のような通りがある。さらに西に向かって歩いて、下り坂を降りきったところあたりに昔は「谷端川」という川が流れていたようである。今は暗渠になっていて、影も形も窺うことはできない。そこからさらに丘を登っていって、雑司ヶ谷に抜けようと思っていたのだが、もう3時。足も痛くなってきたので、この辺りで切り上げることにする。大塚駅まで歩いて、早稲田の方からやってきた都電を撮ったところで、2本目のエクタクロームを撮り切った。

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 ライカM5はM型の中でも不人気な機種、ということになっていますが、ここのところこの機種もご多聞に洩れず価格高騰が進んでいるようです。これはいつ頃だったか、何かのはずみでM5愛が燃え上がり、当時日本橋にあった不二越カメラにて入手。しかし使ってみると、なんとなくもっさりした感じの操作感と、シャッターを切った時の音がちょっとキーンと金属音がするような気がしまして、「これは持病のシャッターブレーキが割れているせいではないか」と妄想した私は、川崎のカメラ修理業者さんに持ち込んで診てもらったところ「全て仕様です」ということでしたが「パララックス補正の動きが渋いのと、露出計がズレてますね。直しますか?」と言われ、この際、ということでオーバーホールしてもらったのでした。

ということで、手持ちのM型の中ではおそらく最も「完調」に近いはずなのがこのM5です。オーバーホールにM5一台分の費用がかかりましたが。。

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Leica M5 + Summicron 50mm + Kodak Tri-X @ Dublin

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Leica M5 + Summicron 50mm + Provia 100

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Leica M5 + Summicron 50mm + Provia 100 @ Dublin

とはいえ、他のM型と比べると、操作感にちょっと違和感があるというのが正直なところで、特にシャッターをかなり深く押し込まないとシャッターが切れない印象があります。シャッターを押し込んでいくと、先端に露出計の測光部をつけた腕木が格納されるのに従って、ファインダーの下端部に表示される露出計の針がビヨヨーンという感じで左端に戻っていくのが「もっさり感」を増幅させているのかもしれません。ということで、かなり大きめのソフトレリーズボタンをつけています。

あと、やっぱりデカいですね。手に持つにしても、ストラップで首から下げるにしても、存在感ありまくりです。Summicronのような小ぶりのレンズをつけていると少々バランスも悪いような気もしますし・・・でもこの「存在感」がある意味よいのかもしれません。今回久しぶりに東京に持ち込んで使って見ましたが、「撮ったったで」感というのでしょうか。そういう満足感を与えてくれるような気もするわけです。

ということで、少々尻切れトンボになってしまっておりますが、気が向いたらまた別の機会にもう少しM5のことを書いてみようかと思います。

 

「Leica M3の系譜学」

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Leica M3 Double Stroke + Elmar 5cm F3.5 + Fujicolor 100

「たとえば民衆が雷をその雷光から分離して、雷光は雷という主体の行為であり、主体の作用であると考えるのと同じように、民衆の道徳もまた強さ〈そのもの〉と強さの〈現れ〉を分離して考える。あたかも強い者の背後にはもっと別の無頓着な〈基質〉のようなものが控えていて、それが強さを現すのも現さないのも、自由に決めることができると考えるようなものである。しかしこうした基質などは存在しないのだ。行為、作用、生成の背後には、いかなる「存在」もない。「行為者」とは行為の背後に想像でつけ足したものにすぎない──行為がすべてなのである。」

ニーチェ. 道徳の系譜 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.734-739). Kindle . 

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6.ライカM3は、よく選んで、買え。

イカM3はファインダー、採光窓、測距計の小窓の周囲に施された「額縁」が好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、個人的にはこの額縁があるせいでカメラの背が少し低く横長に、スマートに見えるような気がして、好きです。こちらは先日入手の初期型73万台のダブル・ストローク。そうです、「ライカの中でも最高の操作感を味わえるのはM3の初期型、ラチェット式でなくスプリング式の巻き上げレバーのシルキーな感触が堪らないのだ!」・・・という巷の噂にすぐ踊るタイプの私、数年前に入手の100万台のシングルストロークを持っているにもかかわらず「M3、おかわり!」してしまったのでした。

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Leica M3 Single Stroke + Elmar 50mmF2.8

で、実際どうなの、「シルキーな巻き上げ」っつうのは?っていうことなんですが・・・お店でチョコチョコと巻き上げてシャッター切ってみた時は「お、これがシルキーってやつ?」って思ったんですが、家に持ち帰ってフィルムを入れて巻き上げてみると、どうも、思いのほか重たいような気が・・・えっと、こんなかんじでいいんでしょうか?というのが正直な感想でした(爆死)。オーバーホール済みって聞いてたんだけどな。。

ですので、もし「M3初期型のシルキーな感触を感じてみたい!」とM3初期型の購入を考えておられる貴兄におかれましては、ぜひ慎重に、コトを進めていただくのがよろしいのではないかと、思います。

ちなみに、「調整不足?」と考えた私はわりと有名なライカの修理屋さんに電話してみたところ「M3初期型は修理受け付けてません」と、にべもないお言葉。。。まあ、60年も昔のM3の初期型を好き好んで持ってるような人だと、直しても「イメージと違う」「シルキーじゃない」とか言い出したりして、トラブルになることが多そうな気はします。

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Leica M3 Single Stroke + Elmar 50mmF2.8

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Leica M3 Double Stroke + Elmar 5cm F3.5

当たり前かもしれませんが、シングルストロークとダブルストロークで撮れる写真の写りに特に違いはありません。正直、これからM3の購入を考えておられる方がおられましたら、やはり年式の新しいシングルストロークを選ぶというのが無難というか、真っ当なライカ人生と思います。

そんなわけで、「もしかして、俺、やらかした?」と思ったダブルストローク機購入のお話だったのですが、しばらく使っているうちに、これはこれでなんだか愛おしくなってくるというか、いや、やはりいいな初期型は!っと感じるようになってきました。やはり、なんというのでしょうか、それまで全く存在しなかった一眼式のレンジファインダーが、この世に生まれた一番最初、前提もない、ベンチマークもない、「背後に行為者のない行為」と言いますか、1954年のゲルマンの空に響き渡った雷鳴一発、それがライカM3なのだ。

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それはともかく、中古のライカM3購入時に予算との兼ね合いでしばしばお悩みポイントとなる2点・・・その1)軍幹部のキズ、その2)バックドアの軋み について、シングルストローク機の購入時に譲歩した時の反省を踏まえて、今回は妥協せずに綺麗な個体を選んだので(その代わり、SS機の倍のお布施をする羽目になりましたが・・)やはり手にもって「なでなで」するぶんには満足度が高いです。M3やM2は前オーナーがライカメーターをつけ外しした時のスレ傷が軍艦部に残っているものが多くて、これはもうそういうものと割り切るしかないと思うのですが、やはりキズがあるよりはない方が気持ちはいいですね。あとバックドアが微妙に軋む個体も少なくないと思うのですけど、これも別に光線漏れがするとかそういうことはないので、実用上全く問題にはならない、とはいえ、手にもっていじっている時に「キシ」とかいわれると、ちょっとテンションが下がるんですよね。。なんのテンションかわからないけど、何かのテンションが。。

実用上初期型でちょっと困るのは、シャッター速度が100分の1秒の下が50分の1秒で、その下が25分の1秒で、ちょっと露出調整がしにくい・・・IIIfみたいに75分の1があるといいのにな。

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Leica M3 + Elmarit 90mmF2.8 + Kodak Tri-X @ Paris

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Leica M3 + Elmarit 90mmF2.8 + Kodak Tri-X @ Paris

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Leica M3 + Summicron 35mm + Kodak Tri-X @ Barcelona

ところで、今回は割と在庫の多いお店で色々な個体を見せてもらったのですが、製造番号と仕様が明らかに食い違っている個体が混じってて(70万台なのにファインダー枠切り替え用のレバーがついているとか)そういうのって買う方で見分けないと、お店の人は残念ながら教えてはくれないので、やはりある程度自分でお勉強していったほうが、後で残念な気持ちにならずに済むと思います。まあ、私のM3も実際のところどうかわかりませんが、チェックポイントは、ファインダー枠切り替え用レバーの有無、シャッタースピードが倍数系列か、大陸系列か、巻き上げノブの中の目印(古いものから横棒、赤点1個、赤点2個と変わっている)、巻き戻し用のスプール解除レバーの長さなどなので、ぜひ勉強されてください。

幸運を祈る!

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Leica M3 + Summicron 35mm + ProviaF100 @ Barcelona

値段をつけること、価値を測定すること、同等な価値のあるものを考えること、交換すること──これらは人間のごく最初の思考において重要な位置を占めていたものであり、ある意味では思考そのものだったのである。

 

ニーチェ. 道徳の系譜 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1293-1295). Kindle . 

 

ちなみに近所の行きつけの本屋さんでは600円の値段がつけられておりました。。

 

 

ライカと「實朝」問題

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4. M6TTLを買え。

おほ君の 勅を畏み ちゝわくに 心はわくとも 人にいはめやも 源實朝

「ちゝわくに」って、「乳湧く」っていうこと?(笑)って調べたら、「千々分に」つまり「さまざまに」っていう意味のようだ。王様の話を聞いてあれやこれやと想いがよぎぎっても人には言わないで、ということですか。

確かに、偉い人の話を聞いて感じたことをそのまま会見などで言っちゃうと、色々大騒ぎにはなるのかな?気をつけよう。

さて、来年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」ということらしい。主要御家人と呼ばれる人たちはたくさんいて、誰がどれだったか常にわからなくなるので、ドラマで整理してくれると嬉しいけど、でも結局北条義時以外は、最終的にはみんな殺られちゃうんですよね。

初代将軍 頼朝 1199年 事故死

梶原景時 1200年 鎌倉追放後、討死

比企能員 1203年 謀反を理由に襲撃されて滅亡

二代将軍 頼家 1204年 修善寺にて殺害

畠山重忠 1205年 謀反を理由に襲撃されて滅亡

和田義盛 1213年 北条氏に対抗して挙兵、討死

三代将軍 實朝 1219年 暗殺。

こうしてみると、實朝って、この非常に血生臭い時代の中、実に16年に渡って将軍職を務め上げてるんです。しかもその間に「金槐和歌集」という日本文学史上屈指の作品まで残している。Shogunでありながら、Poetでもあるという、まさに二刀流、鎌倉時代大谷翔平のような存在なのだ。将軍といっても武芸の才はなく、ひ弱で、蹴鞠をやったり歌を詠んでいるだけで、そのうち船を造って中国に行きたいと言い出したり、朝廷の官位を欲しがったりしてご意見番大江広元に「武家の棟梁なんですから、もっとしっかりしてくださいよ!」って怒られたりもしてたようですが、そんなぼーっとした感じで16年はもたない情勢だったのではないかと、私のような凡人でも想像してしまうところです。少なくとも、王様の話を聞いて感じたことをあけすけに人に話しているとそのうちエライ目にあう、ということを理解するインテリジェンスというかバランス感覚があった人ではないかとお見受け致し申す次第である。

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Leica M6TTL + Summicron 35mm + Kodak Ektar

しかし、手放したカメラで撮った写真って、後で見返してみるとなんだかよく見えてしまうのはどうしてなんでしょう。

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Leica M6 TTL + Summicron 50mm + Fujicolor 100

光線漏れで一旦入院してしまった私のM6 Wetzlerモデル。そのとき私は思ったのであった。このような不測の事態に備えて、やはりバックアップのライカが必要である、と。そしてもう一点、M6を使ってみて気が付いたのは、ファンダー倍率0.72倍のM6に35ミリのレンズをつけた場合、眼鏡着用者の私がファインダーを覗くとフレーム枠が蹴られてしまい、フレーム枠の外側が視野に入らないのである。これまた何かの雑誌の記事か何かで「ライカの魅力は、視野枠の外が確認できるので被写体の動きを予測しやすいから、スナップでシャッターチャンスを逃さないのだ・・・!」という言説を聞き齧っていた私は「せっかくのレンジファインダー機なのに、フレーム枠の外側が見えないのでは、ライカの本当の性能を堪能できないではないか」という妄想に取り憑かれたわけである。そしてさらに諸々のライカ本やネット上の情報を漁っているうちに「M6TTLにはファインダー倍率が0.58倍のものがあり、これならば28ミリのレンズをつけてもフレーム枠の全体を見渡すことができるのだ!」ということを知ったわけです。

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Leica M6 TTL + Summicron 35mm + Kodak TriX

5. M6TTLとM4-2を交換してはいけない

ストーレージを漁ってみると、このTTL、結構いろいろなところに持ち出して使っていたことがわかります。確かに年式が新しいだけあって露出系はM6よりもずっと正確で使いやすかったな。元箱付きでミントコンディションだった僕のM6TTL、なんで手放しちゃったんだろう俺。しかもM4-2と交換したんだったよな。ほとんど正気の沙汰とは思えないが、これがライカウイルスの恐ろしいところで、なんでM4-2が欲しくなったかというと、例の「TTLはカメラの背丈が2ミリ高い」という点がずーっと引っかかってしまっていたことと、カメラのトップカバーの上に「Leitz」の70年代ロゴが白い文字で入ってますっていうところが良かったんです。はい、ほとんどというか完全に莫迦です。

もし手持ちのM6TTLをM4-2と交換することを考えている人がいたら、そんな人多分いないとは思いますが、とにかく、私の経験上、これはもうはっきりと申し上げることができるわけであります。やめておきなさい、と。

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Leica M6 TTL + Summicron 35mm + Provia 100F

M4-2って、ライカが半分倒産しかかってた時にカナダで作られたものだから、品質が悪いっていう噂がありますよね。。あれ、実際噂じゃないです。。ホントだと思います。私のM4-2だけかもしれませんが、結構色々持病があります。特に困るのが、マウントが歪んじゃっているのか、純正のレンズでもくっつかない(ストッパーがカチンとなるところまで回せない)レンズがあるということです。。ただ、なんなんでしょう。出来が悪い子ほど可愛くなるっていうのか、そういう側面もあるような気がして、私のM4-2にはこれまた曇り玉という噂のある、実際に前玉の外側20%くらいレンズが曇っている、ミノルタの28ミリをつけて、リコーGRデジタル用のちっちゃい28ミリファインダーを付けて、使っています。このM4-2も手放すことを考えた時期もあったのですが、やはり置いておこうと思っています。と、言いますのは売っても二束三文にしかならないのと、トップカバーが真鍮で出来ているM3やM2に比べると、亜鉛合金製で軽い(から安っぽく感じるのですが)ということ、あと、パンデミックが終息して将来もしまた海外遠征に行けるようになった場合のことを考えると、最近都市部でも物騒になってきているようですから、暴漢に襲われたりする可能性も考慮しなければならない今日このごろ、盗られても金銭的ダメージが少ないライカとレンズ、ということで、この色々と持病のあるM4-2と曇ったミノルタの28ミリのコンボ、予期せぬ重要性が増しているということに気がついたからです。

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とはいえ、このように見た目はなかなか質素ながらもワイルドな雰囲気を漂わせるM4-2、距離計が1メートルを超えるところでパララックスが引っ掛かるという持病はありますが、1メートルよりも近距離で撮らなければ問題ないし、一部のレンズ(例えば、手持ちのものではエルマリート28ミリ(第二世代))がつかないといったって、別のレンズをつければ良いわけで、特に問題なく(?)写真は撮れるのです。突如としてどしゃ降りに見舞われたパリの街角でスナップした時にも使ったけど、傘を片手に、手荒に扱ってもあまり惜しくないところが、ある意味美点といえばいえるかもしれません。

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Leica M4-2 + Summicron 35mm + Tri-X

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Leica M4-2 + Summicron 35mm + Kodak Tri-X

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Leica M4-2 + Summicron 35mm + Kodak Tri-X

さてはて、いつになったらまたパリに行ってストリートスナップ撮れるようになるのかな。

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Leica M4-2 + Summiron 35mm + Kodak Tri-X

「しかし、この全国的な戦乱は、決して<暗かった>わけではない。戦乱も合戦も単純で直截で愚かでというように、人間の心の動きと行動を規制してしまう。むしろ健康で、<建設的>で、痴呆でといったものが社会を支配する。これは戦乱をしらないものにいくら強調してもたりないくらいである。かれらはもしかすると、健康的で明るく<建設的>であることが平和の象徴だと錯覚しているかもしれないから。そう教え込んだものたちが痴呆なのだ。実朝の生涯を世情として規定していたものは、こういう明るい危うさであったといってよい。」

吉本隆明源実朝ちくま文庫より) 

今読み進めている本。文庫本はもう中古でしか手に入らないようです。

タイトルの「惜別」という小説は読んでいないのですが、それはともかく、「右大臣実朝」はおすすめです。

「アカルサハホロビノ姿デアロウカ。」

太宰は実朝の台詞をカタカナで書いているのだけど、これは他愛のないことのように思えて、なかなか思いつかないアイディアではないか。

 この文庫本の中に隠されている(?)「実朝」という評論を読んで鎌倉三代将軍のことを改めて知るようになった。「実朝」を含め、戦時中に描かれた日本文学に関する一連の評論は、いずれも面白くて、味わい深いものがある。

M6と「東京物語」

カメラを選ぶときに必要なものがある。それは「物語」である。我々はこれに弱い。M3はアンリ・カルチェブレッソンが使った、とか、M2はベトナム戦争の従軍記者たちが愛用したカメラである、とか、M4はギャリー・ウィノグラントが愛用したカメラであるとか、あるいは福山雅治が愛用しているとか、M5は北井一夫氏の愛用のカメラであるとか。。。

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Leica M6 + Summicron 35mm @ Barcelona

そこにいくとM6はそういう「セックスアピール」のある「物語性」を提供してくれるような逸話というか、挿話となるものが少ないように感じる、のが、もしかするといまひとつ巷でM6人気が盛り上がらない理由であるような気がしてしまうのである。

なーんてことをぼんやりと考えていたら、実は手元にとってもヘビー級な「M6物語」がある事に気がついた。

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Leica M6 + Summicron 35mm @ Kyoto

1992年といえば、その前年にイラククウェートの間で湾岸戦争が勃発し、一気に世界経済が冷え込んで、80年代中頃から続いていた日本の「バブル景気」が一気に萎み・・・といった時期であったが、雑誌「SWITCH」で「笠智衆特集」が組まれることになり、撮影のために大船(北鎌倉?)に住む俳優の家に向かったのが「アラーキー」こと荒木経惟巨匠だったのである。笠智衆は「男はつらいよ」シリーズで「柴又帝釈天」の住職としても登場して寅さんの頭を木魚がわりに叩いたりしてるけど、何と言っても「東京物語」をはじめとする小津安二郎監督の映画作品に欠かせない俳優。ローアングルで、標準レンズで小津監督が創り出す淡々とした映像世界で、正面からカメラを向いて「それは違う。そんなもんじゃないさ。お父さんはもう56だ。お父さんの人生はもう終わりに近いんだよ。だけどお前たちはこれからだ・・・幸せは待ってるもんじゃなくて、やっぱり、自分たちで創り出すもんなんだよ。結婚する事に幸せがあるんじゃない。新しい夫婦が、新しい夫婦の人生を作り上げていく事に、幸せがあるんだよ」・・・くうう〜泣かせる(涙)。「東京物語」もいいけど、個人的にはやはり「晩春」がいい!

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Leica M6 + Summicron 50mm (3rd Gen.)

それはともかく、アラーキーは「笠さんを撮るなら、ライカじゃなきゃ」と、大船に行く前に銀座のレモン社にいき、そこで自身「初めてのライカ」としてM6とズミクロン35ミリ、そしてエルマー50ミリを購入し、電車の中で説明書を読みながら笠さんのいる大船に向かったのでした、ということだったそうである(出典:「SWITCH」2017年1月号)。 

「荒木は五百六十グラムのライカボディの感触を確かめながら、吹き出すような汗を何度も拭った。『いいな、いいな』と荒木が高揚していた。

『ライカを使っての撮影は今までなかったのですか?』

荒木にとって初ライカ、今まで一回も触っていなかったことがむしろ不思議だった。

『・・・・・なかったな。ライカは魂を奪うカメラだ。だからずっと避けてきた』」(「SWITCH」No.35 Jan.2017 85頁より引用)

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アラーキーのライカM6と、私のライカM6

さあ、どうです。これだけ濃ゆい「物語」があるでしょうか。よくみんなが「品がない」などと文句を言う正面の「赤バッジ」も気にならなくなってきて、むしろかっこよく見えてきたでしょう、なんてったってあのアラーキーも使ったのですよ、しかも笠智衆さんとの一度限りのセッションでなんの戸惑いもなくお店で買ってそのままのM6で撮影に臨んでるんです。今のライカだと、新品を一発勝負の撮影に使うのはちょっと怖いような気もしますが、この当時の「ライカ」に「初期不良」はあり得ないという確固たる信仰があったのでしょう、なんて言ったって「魂を吸い取るカメラ」なんですから・・

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Leica M6 + Summicron 35mm

ところで、私がM6を買った時に一緒に買ったレンズはズミクロン35ミリの第二世代、6枚玉のいわゆる「ツノ付き」ってやつです。最初は50ミリの古いエルマーあたりを5万円くらいで買おうと思って、レモン社でM6のボディを買った後、銀座に回ったのですが、どこのお店に行っても適当なものがなく、お店の人に「もう銀座にライカはないよ、みんな中国からのお客さんが買ってっちゃったからね!」と言われ、「ああ、もう日本からライカはなくなってしまおうとしているんだ!」という妄想に駆られた私は、日本橋三越のレモン社に駆け戻り、「牧場」のお兄さんからこのズミクロンを購入するに至ったわけです。フィルター枠がなくて、フィルターをつけようと思うとフードと、たっかーいシリーズ7というフィルターを中古で買うしかないっていうのが困ったところですが、バイク王からもらったお金を使い果たして借金生活に入ってしまった私は歪んで分割式なのに分割できないという難有り品の12504型のフードを数千円で購入して、フィルターなしで使ってます。まあ、軽くて小さいし、6枚玉とはいえそこはズミクロン、とてもシャープに写るので、手持ちのライカレンズの中では一番のお気に入りです。

ライカ「現成公案」の巻

3. M6を買え。

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Leica M6 + Summicron 35mm (6 elements) + Fujicolor X-Tra 400 @ 佐渡

「残念ながらライカM6のような最新型のライカ機材には、60年代のライカが持っていたすばらしい精密感、手にして恍惚としてしまうようなあの感じがしない」

田中長徳「間違いだらけのカメラ選び【別巻I】くさっても、ライカ」1994年発行 140頁)

 ライカM6に関しましては、貴殿におかれましてもご高尚のとおり、上に引用させていただいたようなご批判があるのですが、「最新型の機材」といっても、もはや四半世紀もむかしの言説。しかし、このむかし話がいまだに亡霊のように付き纏っているのがこの「ライカ」界隈の不思議なところであり、まさに「忘れられる権利」の必要性が叫ばれる由縁でもあります。

さて、冷静になって考えてみれば中古品のライカなど「普通はあり得ない」お話で、新品MP、M-AあるいはデジタルMをとの、前回申述べました私の見解につきまして、「全くちがう地平からのお話」と耳を傾けていただけなかった貴兄もしくは貴女に、最初のライカとして(願わしくは、「最後の」ライカとして)お勧めしたいのはやはりライカM6でございます。田中長徳氏のようなご批判はあるものの、しかしこれって要は「60年代のライカ」なるものを知らなければ、全く気にはならないことではないかと思われ、まさに「知らぬが仏」とはこのような場面で使う諺なのでしょうか。

中古のMP、M-A或いはM7といった選択肢もあるところですが、最初の2者はほとんど中古品を見かけることがありませんし、見かけたとしても新品とさほど変わらない値段設定となっているわけです。M7は電子シャッターゆえ、この先20年、30年と使うことを考えると不安だ。(高度に消費社会化した今日において20年、30年って現実離れした話であるが、「ライカ」ウイルスに侵されると、金銭感覚が麻痺するとともに、思考における時間軸がやたらと永くなってしまうのです。「形見としてひ孫に遺してやりたい」とかね。「その前にユー、独身だろ?嫁さんもらえ」っていうツッコミはなしでお願いします。)ということで、バイク王からもらった15万円なにがしを握りしめた私が購入を考えていたのはM6TTLです。

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しかし、結局、購入に及んだのはこちらのお品物。ライカM6 Wetzlerモデル。M6「クラシック」などと呼ばれている、いわゆる初期型のM6である。

このM6を購入したのは当時日本橋高島屋の6階にあったレモン社。こちらのお店と御徒町の新橋イチカメラに目当てのM6TTLのブラッククロームがあることを「J-Camera」にて確認済みの私は、ある土曜日の朝、新橋駅で降車、銀座線に乗り換え、まずはこちらのお店に向かったのでした。

しかし、ここでお店のお兄さんに「お勧めはこちらですね〜」と言われたのがこの個体だったのだ。

生来外界事象全般に懐疑的な私は、かねてよりネット上の情報にて、M6の初期型は不具合が多いという噂を仕入れておりましたゆえ「このお兄さんのいうことを信じて大丈夫かな〜」と内心思いました。以下、お兄さんこと師匠とライカ初心者の私こと小僧の間にこの時交わされた問答。

檸檬日本橋店舗店長土曜の朝客おらず暇にて扇を使うちなみにライカ買いたしと初心者の小僧来たりて「M6TTL買いたし」と申すに店長曰く「M6購うなら汝選ぶべきはTTLにあらずこのM6なり」と。小僧問ふ「風性常住無処不周なり、写真機のみならず萬物悉く若き物新しき物こそめでたけれというぞことわり。なにをもてか和尚新しきM6TTLにあらず古きM6を推す」師曰く「汝ただ風性常住を知れりとも、いまだところとしていたらずというふことなき道理を知らず。未だ初心のものなれば頑是難き事にしあれども、M6TTLその背丈六厘の差なれど僅に高し」小僧曰く「いかならむかこれ彼我の写真機背丈六厘の差、底(ち)の道理!」ときに、師、扇を使うのみなり。僧礼拝す。ちーん。

うーん、「真理」って、語って聞かせるものではない、心で伝えるものなのですね〜。

それはともかく、つまり、お店のお兄さんは「カメラの高さが2ミリだけ、ほら、TTLの方が高いんですよね〜。」と、私に教えたのであった。

思えば、このとき私は「特濃」のライカウイルスに被爆したのでありました。

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Leica M6 + Minolta M. Rokkor 28mm + Kodak 400 @ 石垣島

カメラボディの高さの違い、2ミリで評価が分かれるライカの世界。なるほど、そう言われてみてシャッターを切ってみますと、M6TTLはその少しだけ大きなトップカバーの中でシャッター音がカメラの中で反響するのでしょうか、単なる妄想だったかもしれませんが、その時TTLのシャッター音は、私の耳にはノートルダム寺院の大鐘楼の中に響き渡る鐘の音もかくやと思われるのであった。M6の方が少しこもったようなと言いますか、「トンっ」となるほどシャッター音が静かである!と、思ってしまったわけであります。

実は今回この一連の記事を書こうと思いたったきっかけは、最近の中古価格の値上がりにわずかばかりの利益確定に走りかけこのM6をついに手放すことを考えて、半年ほど入れっぱなしだったフィルムの最後の一コマでうちの猫を撮って、フィルムを抜き取った後、ストラップも外した状態でしばらく防湿庫にしまっていたのですが、よくよく考えてみるに、私が持っているライカの中では、このM6が最も美しく、かつ感触が良いのだということに、今更ながらに気が付いて、そのことを忘れることがないようにしなければならぬ、まかり間違って手放して後で後悔するようなことがあってはならぬ、なればこの熱き想いを今こそ書き留めておくべきなり、と思ったということに端を発しているわけであります。

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Leica M6 + M. Rokkor 28mm + Kodak 400 @ 那覇

このM6を使うたびに思い出すのは、これを買ったレモン社のお兄さんのことです。素人なりにファインダーを覗いたりシャッターを切ってみたりして、この個体とM6TTLとを比べた挙句、「じゃあこのM6にします」といった時の彼の喜びようといったら、カメラを買う本人よりも嬉しそうで、頼んでもいないのに、自分でカメラを点検し始めて、全速シャッターを切って、ファインダーを覗いて「うーん、これはきれいな『牧場』だ〜」ってしきりに感嘆していて、私は「きれいなファインダーのことを、ライカ界隈ではきれいな『牧場』というのかな」と思っていたのですが、あれは「極上」といっていたのでしょうね。そして、フィルムを交換するときはファインダの対物ガラスに指紋がつかないように、左手の人差し指の腹をトップカバーに添えてボディをひっくり返して底蓋を外し、外した底蓋はボディを支えている左手の小指と薬指の間に挟んでおくのがいいですよ〜、とか、たまーにバックドアについている電気接点を綿棒で拭いてあげてくださいね〜とか、文字通り「新入」の私にいろいろと教えてくれたのであった。

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Leica M6 + Summicron 35mm (6 Elements) + Fujicolor X-Tra 400 @ 佐渡

これまで色々なお店でライカを購入してきたのですが、思うに、買う人よりも嬉しそうな店員さんがいるお店で買うのが、きっと幸せになれるなんじゃないかと思います。

いやいやいや、20万円前後もするたっかーい中古のカメラを買ってくれるという奇特奇矯なお客さんが来てるんですから、そりゃ、みんな売る人は嬉しそうでしょう・・・って?

いやいやいや、意外とっていうか、そうでもないんですよね。

何だか最近、中古のライカを売ってる店員さん、あまり楽しそうじゃないっていうか、売ってる品物に自信がなさそうな人が少なくないような気がしています。。「え、これ、ほんとこの値段で買うの?」みたいな・・・というのは私の精神的不安定さから来ている偏見?これもコロナの影響で人的交流、ソーシャルインターアクションが希薄になって久しいせいで人が人の心を感じる力が弱まっているせい?こっちはとにかくライカウイルスに感染しちゃって、これ買わないと重症化しそうなんだから、もういくらでもいいんだよ、命には代えられないから!とか思っちゃったりしてるんだけど。。

なので、私はお店でライカを売っている人に言いたい。是非、自信を持ってライカを売っていただきたい。これも「人助け」である、と。

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Leica M6 + Minolta M. Rokkor 28mm @ 沖縄

まあいずれにせよ、そういうわけで、私はたいへん祝福されたライカ人生の第一歩を踏み出したのであった。

あれ以来、足掛け7年このM6を使っているけど、最大の弱点は、よく言われれているとおり、左前方の角度から光が差し込んでいる状態の時、距離計が乱反射して二重像を確認できなくなってしまい測距不能になるという、このモデル特有の「持病」。あと、購入後にフィルムを通して発覚したのですが、数カットに一度の割合で、光線漏れでフィルムの上端部がカブってしまうという症状があったこと。光線漏れについてはお店に持っていって2週間ほど入院して、完治しました。以来、トラブルは一切なし。

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Leica M6 + Summicron 50mm

しかしながら、このように幸福な出会いがあったにもかかわらず、M6を購入したほんの数週間後、私はブラッククロームのM6TTLも手にしていたのであった。。ことの顛末については、また次回。

ライカ「ういやまぶみ」

「いかならむ ういやまぶみの あさごろも あさきすそのの しるべばかりも」 本居宣長

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Leica M3 Double Stroke + Elmar 5cmF3.5 + Fujicolor 100

「ライカウイルス」という言葉を生み出したのは、田中長徳氏だったのか、赤瀬川源平氏だったのか、佐々木悟郎氏だったのか、定かではないが、確かにライカには他のカメラにはない、何か私たちの「物欲」を狂わせるものがあることは、もはや疑問の余地を挟む余地がないほどに客観的に明白な事実である。

私などはまだまだ「序の口」、ライカを語るなど一万光年も早いわ!とお叱りいただくであろうとは自覚しつつも、世の中に「ライカ病」というこの病に冒されつつある人がいるとするならば、この病の道の先達として、何かアドバイスというか、蘊蓄というか、ここは一つ、ひとくさり、垂れてみたいというのが人情というもの、いや、あの日の私、そう、my first Leicaを買おう、とヤマハのバイクをバイク王に売って得た十数万円を握りしめて東京に向かったあの日の私に向かって、今こそ伝えたいことがある(ここでドン、と机を叩く)!

本居宣長が述べたとおり、私はまだまだ初めて修行の山登りに向かって山の裾野をテクテクと歩いている新米の山伏のようなもの、ここに書き記すことは私の粗末な麻の着物の裾が雑草の葉と擦れてついた青いシミのようなものにすぎないが、果たして貴殿の参考になるものかどうか、はて、いかがものであろうか・・・

 

その1.新品を買え。

 もし、今の私が、あの日の私と入れ替わることができたとしたならば、私は新品のMPを買うであろう。当時、私は50万円を超える新品のフィルムライカを買うなんて「あり得ない」と思っていた。そんな、カメラに50万円も払うなんて、正気の沙汰ではない、と思っていた。しかし、いま、わかる。50万円のカメラなんて、買えるか!と思っている人でも、何回かに分けて15万円から、ともすれば25万円もするカメラを、気がついたら5台、6台と買ってしまうこともあるのだということが。

今、MPって新品だと60万円?消費税が6万円?

しかし、以下のような方程式が成り立つのである。

[新品のMP<中古のM6+M3+M4]

M6を買ってしばらくは「俺もライカ人♪」とご機嫌な日々が続くのだが、そのうち「ライカM6なんて、ライカじゃない。本当の『ライカ』を知るには、やはりM3だ」「M3を知らずしてライカを語るなかれ!」などというまことしやかな記事なりなんなりを雑誌とか、ブログとか、古本とかで、目にすることになるわけでです。そんなことないだろーっと、俺は写真が撮れればいいんだもんねっと、聞こえないふり、見て見ぬふりをしているうちはまだ偽陰性、すでにその実ライカウイルスに冒されていて(これを潜伏期間という)、そして、ある夜ふと目が覚めた時に、すでに考えているわけです。

「やっぱ、M3って、違うのかな。」

さて、ここで、シングルストローク(巻き上げレバー1回の操作でフィルムを巻き上げるタイプ)を買う人と、ダブルストローク(レバーを2回引いて巻き上げるタイプ)を買う人に分かれる。シングルストロークを買う人は、比較的軽症であるが、ダブルストロークを買う人は重症化する恐れが高い。なぜならば、ダブルストローク(1954年〜1958年くらいに製造)の方がシングルストローク(1958年以降製造)よりも古いことに加え、ダブルストロークは機構的にデリケートなので、当然のことながら「当たり外れ」があり、予算をケチった結果不満足な個体を掴んでしまい「こんなはずじゃないはずだ」と別の個体に買い直したり、オーバーホールに出して結局思ったようになおらなかったりして(ダブルストローク機は修理を受け付けないお店もある)「お布施」残高が積み上がることになる可能性が高い。そういう意味では「シルキーな巻き上げの感触はダブルストロークのスプリング式が最高」などという都市伝説的ポエムに幻惑されることなくシングルストロークを選ぶ人の方が、無駄遣いをすることは少ないように思うが、でも結局「ダブルストロークのシルキーな感触って、どうよ?」と考え出して、ある日衝動的にダブルストローク機も買ったりするので、結局は同じことかもしれない。

ちなみに私は、M6もシングルストロークのM3もダブルストロークのM3も買ってしまったクチですが、この中で一番軽くスムーズに巻き上がるのは、間違いなくM6です。しかし、どのM6もそうなのかわわかりません。私のM6は、巷ではあまり評判がよろしくない初期型(いわゆる「WETZLER刻印」というやつ)なのですが、比較的上手に調整されているのだろうと思います。

そう、結局のところ中古のライカは「個体差」があるわけです。今時30万円後半、下手すりゃ40万円台のプライスタグがついた美品クラスを購入されるならば別ですが、現実的な価格の中古品の場合、いくら見た目が良くっても、そいつがどんな素性の女、もとい、カメラなのかは、買って、フィルムを通して、使ってみるまでは、わからない。

そんなふうに思います。

そういうわけで、新品のMPを買うなんて、お金の無駄遣い!と考えている貴兄は、ぜひ冷静になっていただき、考え直していただきたい。長い目で見れば、新品のMP一台で済むならば結局は安い買い物という見方もできるわけです。

ブラックペイントのMP、いいよ〜。

ファインダーは新品だから当然だけどスカッと晴れわたり、二重像もくっきりはっきり、「くもり」なし!「バルサム切れ」なし!「無限遠がちょっとズレてる」とか「フレームの枠になんかポツポツある」ということもなし!「あパララックス補正が途中で引っ掛かる」ということもなし、巻き上げるとレバーが滑って一コマ分巻き上げないとか、巻き上げレバーが止まらずにグルーンって行き過ぎちゃうとか上下にガタガタするとか、コマとコマが重なるとか、露出計が2段ぐらいずれてるとか、シャッター幕にカビ跡があったり、微妙に光線漏れしたりとか、バックドアがなんかパコパコするとか、フィルムレールに錆が、とかそういうことは、新品だから当然だけど、一切ないんですよ(ないはず)?もちろん傷も凹みもスレも、ありません!新品は間違いなくどれもが「ミントコンディション」の「美品」です。当たり前だけど、うそ偽りのない「新同品」です。しかもブラックペイントで、使えば使うほど正真正銘のエイジングができていくという(まあ、自分の肉体も一緒にエイジングするわけですが)、もう最高じゃないっスか。

ああ、あの日の私に戻ることができたなら、私は迷うことなくブラックペイントのMPを買っていたことでしょう。

MPって、今、予約生産みたいですね。でもライカの予約はワクチン接種の予約みたいに複雑な手続きは必要ないから、チョー楽勝じゃないっスか。三つぐらいの素性の知れないウェブサイトにアクセスして個人情報を打ち込まないとならないとか、システムがダウンするとか、電話回線がパンクするなんていうようなこともないですし。しかも新品なら、銀座のライカストアでVIP待遇してくれますよ?中古カメラ屋さんの海戦山戦のおじさんや無愛想なお兄さんとのお互いに相手を値踏みするようなかけひきで気疲れしたり、帰りの電車で「俺ってぼったくられた?」とガラスのハートが微妙に傷ついたりすることもなくて、コーヒー飲ましてくれて、帰りに名刺くれて、しばらく立ったら電話がかかってきて「〇〇さま、先日のMPの調子はいかがですか?」ってご機嫌伺いしてくれますよ?

え、MPは巻き戻しが斜めについたクランクでなくノブをぐるぐる回すタイプだから、扱いにくい?

多分それって、あのノブをぐるぐる回すにしてもフィルム一本巻き取るのにかかる時間はクランクでクリクリ巻き戻すのと比べて、10秒とは言わないまでもせいぜい30秒位の違いしかないと思いますし、MP買わなければ、最初はM6とかM4にしたとしても、結局しばらくたったらM3とかM2を手にしてることになるわけで、その時にはノブでグリグリフィルム巻き戻しながら「んー、この巻き戻しの時間にまた新たなイマジネーションが生まれることもあるのよね」とか嘯くようになってるわけですから、心配は無用、結局は同じことなのである。

え、M-Aにしたい?それも「あり」。カメラに露出計ついてなくても、セコニックのツインメイトを買えば、困ることはない。昔の人は70年代になってM5が出てくるまで露出計のないカメラでたくさんいい写真を残してるし、機械で露出測るよりもヤマカンで絞りとシャッター速度決める方が、個性のある写真が撮れるような気もする。でも、個人的にはM-Aの黒ってちょっとシンプルすぎて寂しい感じがするので、M-Aにするならシルバーの方がいいな。

ところでMPってみんな大好きマップカメラの買取サイトで検索してみたら、30万円ちょいで買取してくれるのね。と、いうことは貴方は税込66万円払うのではなくて、66-32=34万円しか払っていない、かつ、そのうち消費税6万円分についてはですね、この国の明るい未来のために、しっかりと、活用してまいりたい、このように考えるわけでありまして、つまり何らかの形で国民に還元されるというわけなのでありますから、エーその、つまりですね、新品のMPの国民における「自己負担額」はまさに、実は、28万円なのであリマス。

これって、どこかの国の社会保険制度よりもよっぽどリーズナブルであり、かつ透明性が高い取引ではないか、と思うわけです。自分が負担する金額と、将来戻ってくる金額が、明確である。

(ここから低く、小さな声で)しかもですよ、ほんっとここだけの話ですが、MPって今予約製造っていうことは、そのうち近い将来、米国金利が上がって一本調子で上がってきたダウ平均株価が下がり始める頃にはディスコンの可能性もあると思われるわけです。もしMPがディスコンになったら、その時はあなたが手にしているそのMPの値段、跳ね上がるかも知れませんよ・・・下手したら、購入費用の66万円そっくりそのまま、いや、プラスの利回りで戻ってくるかも。

決まりです!米国株もビットコインも既に高騰、過熱気味の今、「買い」はライカです!MPです!この際なんなら黒と銀まとめてセットで買っときましょう!投資って2倍投資すれば、リターンも単純に2倍です。どこかの国の社会保険精度なんかよりもよっぽど明朗会計なんです。

・・・ヤッベえ、こんなこと書いてるうちに自分が買いたくなってきたMP・・・。

その2.デジタルMを買え。

ほんと実もフタもなくてすみません。でもフィルムのライカを買おうとしている人は、いまいちど「なんでフィルム?」と問い直しても良いのかも知れない。もちろん、トライエックスやアクロスで撮影して現像もプリントも暗室にこもって自分でやって、作品はどこかのギャラリー借りて展示して・・ということでしたらすみません、ここ読み飛ばしてください。でも、貴殿のワークフローがもしもお店で現像、お店でスキャン、インスタやFlickrで公開して・・・ってことだったら、それってフィルム、しかもライカを使う意味ってあるのでしょうか?

人の趣味に水差すようなこと書いて、ご気分を害された方がおられましたら、ごめんなさい。でもこれ、私、実は近所の写真屋のおじさんに言われたことで、実際答えに窮してしまい、「そのようなご批判は当たらない」と返すしかなかったわけであります。

お店でスキャンって結局露出とか「見栄え」が良いように機械が自動で補正しちゃうんですよね。一度お店の人に「補正なしでスキャンってできないんすか」と聞いたことがあるけど「やり方わかんない」って言われちゃいました。それが嫌でスキャナーを買って自分でスキャンし始めたんですけど、今度はホコリとの無限バトル。ブロワーでふいて、スキャナーのガラスの上を綺麗なクロスで拭いて、ライトルームやフォトショの消しゴムツールで写り込んだホコリの影をシコシコ消して・・・で結局はJpegファイルに置き換えてるんだったら、最初っからデジタルで撮ったらチョー早くね?って、ある日気が付いてしまったわけです。フィルム代も現像代もかからないし、スキャン代あるいはスキャンしてゴミ取って画像整えてっていう手間も全てスキップできるんですよね・・しかも得られる画像は、もうこれ以上は望めないってくらいの高解像度のキレッキレの画像ファイルな訳です。

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Leica M Type 240 + Summilux 50mmASPH.

確かにフィルムで撮ってスキャンして得られる画像って、それでも独特の雰囲気があるわけですが、実はデジタルのM型ライカも、フィルムで撮るのとなんだか似たような味わいがあるような気がしています。これっていったいなんなんでしょうね。フジのXシリーズもいい味出してると思うんですが、ちょっと薄味な気がします。アジの焼き魚定食とトンカツ定食ぐらいの違いがあるような感じというのでしょうか。フルフレームのセンサーがついてるからかな。でもNikon D750を使ってみたこともあるけど、それとも違うような気がするんですよね。。

とにかく、デジタルのM型につきましても、しっかりと、検討してみる価値は、これはあると私は思うわけでアリマス。

え、デジタルカメラは寿命が短い?

確かに。でもひとまずのところ15年選手のうちのオリンパスE-1だっていまだに特に問題なく動いていますし、昨年末入手したライカMも5年落ち?ですけど、少なくともあと5年は持つのではないでしょうか。デジタルライカは壊れると修理代が高くつく、という話は聞いたことがあるので、そこのところはまだ未知数ですが。。でも一時期フィルムに狂ってた時に1年間で使ったフィルム代・現像代を計算したら、15万円くらい使っていたので、仮にこれをさらに暗室で自分で焼いて・・・とかする費用と時間を考えると、フィルム道に邁進するのと、サクッとデジタルに乗り換えちゃうのと、どちらもあまり有意な違いはないのではないかという気がしています。

「ゴタクはもうたくさんだ、とにかく俺は、フィルムで、ライカで、撮りたいんだ!」

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Leica M3 Double Stroke + Elmar 5cm F3.5 + Fujicolor 100

承知いたしました。

そうであるとすれば、やはり定番はこちらではないでしょうか。

(以下、続く)

 

 

 

 

 

Music Spot「来歌」にて

少し前に「女性は話が長すぎる」というような発言をして物議を醸し出した人がいたけど、こんなことがあるたびに思い出す出来事があります。

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Leica IIIf + Elmar 50mmF3.5 Red Dial + Acros 100

もう30年も前の昔、スペインのある街の建設現場に出張で行ったのですが、現地法人が破産してしまって、現地の建築作業員たちに給料を払えなくなっちゃってたんですね。それで工事現場の事務所の前にいろんな国からやってきた労働者たちが(中でも圧巻だったのが、アイルランドからきた労働者たちで、ポパイに出てくるブルートみたいにぶっとい腕で、一発殴られただけでそのまま昇天できそうな、「屈強」という言葉はまさにこのような体格の人たちのためにあるのだろうなと思いました)現場事務所の前に集まって、「金払え、金払え」とシュプレヒコールを上げだしたのね。

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Leica IIIf + Elmar 5cmF3.5 Red Dial + Acros 100

で、いやこれすごい不穏なことになっちゃったな、と思ってたら、そのうち石を拾ってプレハブの事務所の建物に向けて投げ出したんです。トタンの屋根に石がガンガンと音を立てて当たって、「これは非常に危険な状態ですね」っていうことで、上司(田中さんとしておきましょう)と私とで現場の指揮を取っていたアメリカ人のところにいって、「極めてデンジャラスな状態になったので、女性職員は先に帰宅させるべきだ」と提案したわけです。

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Leica IIIf + Elmar 5cmF3.5 Red Dial + Acros100

そしたら、そのアメリカ人というのが女性の弁護士さんだったんだけど、間髪入れずに「Mr. Tanaka, you are a chauvinist!」って言ったんです。

「ショーヴィニスト」ってWikiで調べたら「排外主義者」っていう意味が紹介されていますけど、「男尊女卑主義者」という意味があるみたいで、要は「女性だからということでなんで別扱いで帰さないといけないんだ。それは性差別である」というのですね。

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Leica IIIf + Elmar 5cmF3.5 Red Dial + Acros 100

「来歌」と書いて「ライカ」と読むのかな。ライカでもって「来歌」を撮る・・・「きままや」っていうお店も楽しそうだし「よこよし」っていうお店も美味しそう。

来年くらいになったら、また昔のように飲んで歌って、、という日常が戻ってくるのでしょうか。

それにしても、あの時「chauvinist」という英単語を即座に理解した田中さんは偉かったな、と思います。私は何を言われたのか全く理解できず、まさに「豆がハト鉄砲を喰らったような」顔できょとーんとしていたのでした。

ということで、先日入手のElmar 5cm、少々曇りありの物件でしたが、試写の結果、全然オーライの写りなのでした。