しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Fujifilm X-T4: 奥渋逍遙

「それゆえ哲学は『どんなものが存在するか』に関しては確信の度合いを減らしてしまうが、『どんなものが存在しうるか』に関する知識を著しく増大させる。開放的な懐疑の国に旅したことがない人から尊大な独善性を取り除き、見慣れたものにも見慣れない側面があることを示すことで、私たちの脅威の念を生き生きと保つのである。」

バートランド・ラッセル「哲学入門」ちくま学芸文庫「第15章 哲学の価値」より)

Fujifilm X-T4 + XF33mmF1.4

渋谷の奥、すなわち「奥渋」にて。カツ丼並が1000円、上は1500円である。足立区、葛飾区方面と比較すると、値段設定が少々強気だ。ダイヤモンドが嵌め込んであるのか、招き猫の目がキラーン、と輝く。この辺りは高級住宅地なのであろうか。きっとそうに違いない。「勝ち組」の人たちが住んでいるエリアなのであろうか。道行く人々の服装も垢抜けているようだし、若い人もやたらと大声で騒いだりはしていないし、なんだか皆さん知的な雰囲気を放っているのは東大駒場が近いからなのか。何やら小洒落たお店がたくさんあって、アートな本を色々集めているゲージュツ的な感じの本屋さんなどがあったので、ふらりと立ち寄った私は田中小実昌の「ほろよい味の旅」という文庫本を一冊、買ったのである。

Fujifilm X-T4 + XF33mmF1.4

「あなたも」なんだろう。「あなたも、歌えます」か?そう思って看板の裏に隠れている部分を覗いてみたら、下の句はこうあった。

「あなたも、覗くだけ?」

・・・謎である。何の店なのか。ジャズ喫茶ではないのか。

Fujifilm X-T4 + XF33mmF1.4

「哲学的観想がその見渡す範囲を最大限に広げるとき、宇宙は敵対する二つの陣営---敵と味方、授けてくれる者と邪魔をする者、良い者と悪いもの---に分けられることなく、全体が公平に見渡される。」

バートランド・ラッセル「哲学入門」ちくま学芸文庫「第15章 哲学の価値」より)

このX-T4も発売から2年半でカタログ落ちしてしまったのか、量販店でも見かけなくなってしまった。先に発売されたX -Pro3はよく店頭で見かけるのだけど・・・不人気なのか?

X-Tシリーズは長男、次男、三男坊と、「勤勉で実直なだけが取り柄の男ですから、じぶん」っていうか、「見た目」が実用的すぎていま一つ好きになれなかったので、お金出して買おうと思うに至らなかったのですけど、この四男坊は、もう少し都会的というか、頭の部分がちょっと平たく、低めに身構えているように見えるのが気に入って、購入に至りました。X -Proシリーズのような”sex appeal”はないカメラだけど、使いやすい。絞りとシャッタースピードが物理的に把握できる点が、マニュアルのフィルムカメラやライカから持ちかえたときに戸惑わなくてすむ。特に良いのが、静かで上品なシャッター音だ。X -ProシリーズやX100にはない高級感を感じさせてくれるのだ。大きさと重さのバランスもいい。色気はないが、とうぶん私はこのX-T4を使っていくことになると思う。使いやすい、良いカメラである。

このカメラで、「見慣れたもの」の「見慣れない側面」を切り取ることができれば・・・・と言うことで、XF90ミリF2.0を入手してしまった私、まだ持ち出してシェイクダウンはこれからです。