しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Nikon F: 変わりゆく東京、渋谷編

Nikon F + Nikkor H Auto 28mmF3.5 + Tri-X

これまでに何度も引用していますが、漱石の「三四郎」の冒頭で、熊本から上京してきた学生の主人公が「東京ではいつでも何かが壊されて、その後を追うように次から次へと新しい物が造られている」と驚くシーンがあるけど、とめどもない変化というのが東京という都市の本質であり、目的であり、結果なのかもしれない。

とはいえ、このスクランブル交差点の様はあまり変わらないかな。ただ私が上京した頃の記憶だと、もう少し鬱蒼とした感じの街だった様にも思う。こんなに空が広かったかな?この辺りにあった鯨肉を食べさせる店で高校の先輩がご馳走してくださったことを覚えている。その後、この辺りを少し案内してくださったのだけど、記憶の中ではスペイン坂に路面電車が走っていた様な記憶が・・・たぶん酔っていたのだと思います。

駅を出て正面のヤクルトの看板があるビルがこ交差点のバックドロップの様な役割を果たしていると思うんだけど、あまりに長い間この建物を目にしてきたので、この建物がなくなったらどんな風景になるのか想像もつかない。この建物は是非とも「東京歴史的建造物」として保存していただきたいと願うが、おそらくある日突然なくなって全く別の建物が立ち、そうすればそれまで何があったのかはすっかりと忘れてしまうのだろう。

雨の日はいい。雨の日は東京的だ。東京は雨なのだ。

あわただしく行き交う見知らぬ人たちも、雨の日はなぜか優しげに見える。気のせいであろうけど。

日頃人気のない住宅地ばかりを撮り歩いていて、こんなに人通りの多い場所に撮影に来たのは久しぶりだったので、なぜか翌日ぐったりとしてしまったのだけど、こうして現像されたものを見ると雨の日の街は意外と優しそうにみえる。

また行ってもいいかもしれないな、渋谷。また、雨の日に。