東京は秋。
秋になると、本棚から手にとって、また開きたくなる。荒木経惟の「東京は、秋」。東京を知らない人にとっては、意味を見出しがたい写真集かもしれないが、そういえば、私自身、東京を知っているというわけではない。そんな私にも、「東京」は、ある。そして、「東京」が故郷ではない人たち、「東京」とは縁もゆかりもない人たちにとっても、「東京」に秋は来る。
そして、誰にでも、東京の秋の中にいた記憶が、きっとあるはずだ。
まさに今、東京は、秋。
見知らぬ駅でふと電車を降りると、駅の北口に出る。そして、北に向かって歩いて行くのだ。秋が深まるほどに、東京の北の空は澄み渡っていく。
歩くほどに、東京の秋は深まっていく。