しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Canon F-1:「昭和ノスタルジア」とは何か。

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また悪い癖が出てしまいました。。

或る雨の土曜日に、久々にCanon F-1を持ち出したんです。このCanon旧F-1なぜ欲しくなったかというと、記憶喪失から復帰した後の中平卓馬がこれに100ミリのマクロレンズをつけて、シャッタースピード125分の1秒、絞り11半固定で全ての作品を撮影していたという「物語」にすっかり影響されてしまった私、「中平卓馬」モデルとして、入谷にあるのになぜかアカサカカメラにてボディ購入、その後100ミリマクロもU.C.Sさんから無事に手に入れまして、何度か中平卓馬ごっこをした後、防湿庫に眠らせていたわけです。

ところが、先日来のアラーキーブームで買った「男と女の間には写真機がある」の中のエッセイにて、キャノンF-1のシャッター音について記述されていたのを見つけたのでした。

「・・・ましてや直感音感がすぐれている私が快感したのは、被写裸体を、肉体を、風景を抱擁してしまうようなシャッター音楽である。私は、シャッター音まで写っているのではないかと思想しながら、『私現実』を写していった・・・」

(「男と女の間には写真機がある」荒木経惟 太田出版 所収「私現実ーあるいは風景写真術入門」初出「WORK SHOP」 3号昭和50年3月1日号より引用しました。)

これを読んで、「そーいや、どんなシャッター音だったっけ」と久々に防湿庫から取りいだしたるマイF-1、巻き上げる感触は滑らかで、シャッター切ると「シャポンッ」という感じの音がする。これはこれで、ライカとは異なる世界の良いシャッター音だったのであった。

そこですっかりとキャノン旧F-1モードとなりました私、或る雨の土曜日に大塚駅に降り立ち、そこから西ヶ原、滝野川、あたりを抜けて、王子まで放浪したというわけです。

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Canon F-1n + New FD 28mmF2.8 + Provia 100

去年の秋以来入れっぱなしになっていたカラースライドフィルムを撮り切って、トライエックスに詰め替えます。 

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久しぶりの一眼レフですが、やはり使いやすいですね。。特にF-1はファインダーの右に縦に表示される追針式の露出計が使いやすいです。 私のF-1は後期型なので、昭和50年ごろに作られたもののはずだから、製造されてすでに45年ほどが経過しているはずなのですが、いまだ正確に露出を測ってくれてます。

で、こんなに調子いいんだったら、35ミリのレンズも持っとこうかな、と思い、秋葉原のにっしんカメラに「見るだけだから」と立ち寄ったのがウンの尽きというのでしょうか、なかなかいい感じのNew F-1が目に入ってしまったのでした。その場では、なんとか物欲を制御して、帰宅したのですが、結局・・・

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やっちまいました・・レンズとセットでボディも(笑

ただ、使ってみると、正直なところ、旧F-1の方が「使いごこち」はいいですね・・・特に巻き上げるときの感触が、ニューF-1は、色々言われているようにギリギリガッチョン、とまでは言わないけど、レバー巻き上げ、最後のところで「ガチっ」というところまでまわさないとならないので、私のように気の弱い人間には、「このまま何万回も巻き上げていくと、そのうち壊れんじゃない?」と、無用にメンタルな負担がかかります。

ただし、ファインダーは断然ニューF-1の方が明るくて見易い。ここは、70年代と80年代の世界の「見え方」を如実に反映して「歴史」の展開を感じさせる部分です。

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Canon New F-1 + New FD28mmF2.8 + Fujifilm Superia 400

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今回初めて気がついたんですが、「石神井川」って、意外にもかなりワイルドな川だったんですね。。上の写真の場所、まさに「都会の渓谷」っていう感じです。桜の花が咲くころに、また来てみたい。

この「昭和ノスタルジアとは何か」という本、新聞の書評に惹かれて買ったきり、すでに7年が経過しようとしています。毎年夏休みになるたびに「今年こそ読むぞ!」と意気込んで引っ張り出すのですが、今年もまた、さしてページが進まないままに、夏が過ぎ去って行こうとしています。