しまりす写真館の現像室から

カラーネガフィルムでユルめに写真を撮っています

Leica Up to Three.

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Leica M3 + Elmar 50mm F2.8 + Provia 100F

ウイスキーは2杯まで、と村上春樹氏はその著作「羊をめぐる冒険」の主人公である「僕」に言わせている。曰く、ウィスキーは2杯目が一番美味しい。「3杯目から先は味なんてない」ただ胃に流し込んでいるだけである、と。

その主人公「僕」が愛飲しているのが、カティーサークだ。今カティーサークを愛飲している人はどれくらいいるのだろう。最近は酒屋でもあまり見かけなくなったような気がする。

社会人になって、1年目のころだと思うんだけど、会社の寮の近所の酒屋でウィスキーを買いたいと思って、店の棚の前で「角」にするか、それよりも下の「ホワイト」にするかで、10分くらい悩んだことがある。角は1000円を超え、ホワイトなら1000円以下で買える。当時の僕にとって、1000円は大きかったのだ。舶来もののウィスキーなんて、手が出なかった。カティーサークもだ。

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Leica M3 + Summicron 35mm + Provia 100F

それからさほど立たないうちに、友人の結婚式の2次会が六本木であって、みんなが飲み残したバランタインを2本もらってタクシーで寮まで帰った僕は、運転手さんにそのうちの一本をあげたことがある。あのバブルってやつがささやかな僕の生活にも影響を与えていたというわけである。

久しぶりに「羊をめぐる冒険」を再読して懐かしくなった僕は、近所の酒屋でカティーサークを見つけて、買ってみた。1300円ほどだった。なるほど1杯目はほっとして、2杯目は目の前の坂を登るのに一生懸命だった頃の味を少し思い出したような気がしたが、3杯目からはやはり味がしなくなるのであった。

イカについても、「表現のために使うライカ」の数は3台まで、と田中長徳氏がその著作「Leica, My Life」で述べている。私の3台目のライカはIIIfであった。4台目がこの、シングルストローク1960年製のM3だ。ライカは4台目でもちゃんと写真が撮れるのだ。味がしなくなるということは、多分、ない。

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Leica M3 + Elmar 50mmF2.8 + Provia 100F

やはり田中長徳氏がその著作「Leica, My Life」の中で述べていることに、デジタルカメラで撮影した写真は数ヶ月経つと忘却の彼方である、というのだ。今回アップロードする写真はいずれも5年ほど前に撮影したものなのだけど、なるほど、それぞれのカットをなぜか記憶しているのだ。実際には、フィルム撮影の場合、撮影した写真をその場で見ることはできないから、日本に帰ってきて現像してもらい、スキャンされた画像を見て、そこで記憶と映像が初めて結合したはずなので、「撮影した時のことを記憶している」というのも正確ではないような気がするのだけど。

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Leica M3 + Summicron 35mm + Provia 100F

プロビアもすっかり高くなってしまって、おいそれと使えなくなってしまったけれど、こうして昔に撮った写真を見返してみると、やっぱりいいな、と思います。富士フイルムさんには是非頑張って、供給を続けて欲しいな。僕はもう使えない、というか、プロビアを使わないとならないような華々しいイベントが僕にはもう起きなさそうなんだけど、これからライカを携えて旅に出ようという人のために、なんとか、生産をやめないでほしいな。

勝手なお願いですけど。